中小企業のAI入門 ・ 実務

会議の議事録、AIで楽になる?中小企業が最初に知っておきたい基本と手順

会議の議事録作成は、担当者にとって地味に負担の大きい仕事のひとつです。この記事では、AIを使って議事録作成をどう効率化できるのか、専門知識がなくても理解できるよう、基本から順を追って解説します。「まず何から始めればいいか」が、読み終わったときにイメージできる内容になっています。


1. この記事でわかること

  • AIを使った議事録作成の仕組みが、おおまかにイメージできる
  • 実際に試せる、初心者向けの最初のステップがわかる
  • 初心者がつまずきやすい落とし穴を事前に知ることができる
  • 情報の取り扱いなど、使う前に確認しておくべき注意点がわかる

2. 結論(さきに言うと)

AIを使った議事録作成は、会議の録音データをテキスト化し、それをAIに整理させる、という2段階で進めるのが基本です。完全に自動で完成するわけではありませんが、「書き起こしと構成の下書き」をAIに任せることで、担当者の作業時間を大幅に減らせます。まずは社内で行われる小規模な会議ひとつを試し場にするところから始めるのが現実的です。


3. 基本をやさしく解説

AIで議事録を作る、と聞くと少し難しそうに感じるかもしれませんが、大まかな流れは料理のレシピに似ています。「素材を用意する(録音)」→「下処理する(文字に変換)」→「味を整える(AIで整形・確認)」という3つの工程です。

工程1:会議を録音する

まず、会議の音声を録音します。スマートフォンの録音アプリや、ZoomやTeamsといったオンライン会議ツール(=インターネット経由で複数人が顔を見ながら話せるビデオ通話サービス)の録画・録音機能を使うのが一般的です。

工程2:音声を文字に変換する(文字起こし)

録音データをそのままAIに読み込ませることはできないため、まず「文字起こし(=音声の内容をテキスト=文字データに変換すること)」を行います。これを自動でやってくれるサービスが複数あります。代表的なのはNottaやAmiVoice、あるいはZoom自体が持つ文字起こし機能などです。精度は発言者の声の明瞭さや録音環境によって変わりますが、静かな会議室であればかなり精度よく変換できます。

工程3:文字起こしデータをAIに整理させる

変換されたテキストを、ChatGPT(=OpenAI社が提供する対話型のAIサービス)やClaude(=Anthropic社が提供する同様の対話型AIサービス)などの生成AI(=人間が指示を与えると、文章や画像などを自動で作り出すAI)に貼り付け、「この会議の議事録を作成してください」と指示します。この指示文のことをプロンプト(=AIへの指示文)と呼びます。

たとえば、次のようなプロンプトを使うと整理しやすくなります。

「以下は会議の文字起こしです。参加者、決定事項、議題ごとの内容、次回のアクション(誰が何をいつまでに行うか)を整理して、議事録の形にまとめてください。」

このような指示を添えて文字起こしテキストを貼り付けると、AIが構造化された議事録の下書きを生成してくれます。あとは担当者が内容を確認・修正して完成させます。


4. 初心者がつまずきやすいポイント

「録音さえすれば、あとはAIが全部やってくれる」と思ってしまう

実際には、文字起こしの精度が低いと、AIが出す議事録も的外れな内容になります。複数人が同時に話したり、専門用語や社内固有の言葉が多い会議では、文字起こしが崩れやすいです。AIの出力を必ず人の目で確認することが前提です。

文字起こしテキストが長すぎてうまく処理できない

無料版のAIサービスには、一度に扱えるテキストの量(これをトークン数=AIが処理できる文字・単語のまとまりの量と言います)に上限があります。1時間を超えるような長い会議の文字起こしを丸ごと貼り付けると、途中で切れてしまったり、エラーになることがあります。会議を複数の塊に分けて処理するか、有料プランの利用を検討する必要が出てきます。

プロンプトが漠然としすぎて、使えない結果が返ってくる

「議事録を作って」だけでは、AIはどういう形式にすればよいかわかりません。「決定事項と担当者・期限を表形式でまとめて」のように、出力形式や含めてほしい項目を具体的に指定すると、ずっと使いやすい結果が得られます。


5. 中小企業の現場ではどう考えるか

中小企業では、議事録担当が会議への参加者と同じ人であることが多く、「話を聞きながらメモもとる」という状況が当たり前です。AIを使う最大のメリットは、この「聞きながらメモ」の負担を減らし、会話に集中できることです。

最初は、毎週ある定例ミーティングのような、参加者が少なく内容も比較的定型的な会議から試してみることをおすすめします。慣れてきたら、営業の商談記録や採用面接のメモ整理など、他の用途にも応用しやすくなります。

費用の目安としては、文字起こしサービスは無料プランを持つものもありますが、利用時間や機能に制限があります。ChatGPTの有料プラン(2026年6月時点でChatGPT Plusは月額20ドル程度)を利用すると、扱えるデータ量や精度が上がります。まず無料の範囲で試し、業務に合いそうであれば有料への切り替えを検討するのが現実的な進め方です。


6. よくある誤解

誤解1:AIが作った議事録はそのまま使える

実際は、AIの出力はあくまで「下書き」です。発言の意図を読み誤っていたり、参加者の名前が誤って変換されていたりすることがあります。最終確認は必ず人間が行ってください。

誤解2:録音さえあれば、テキスト化は一瞬で終わる

文字起こしの処理時間は、サービスや音声の長さによって数分から十数分かかる場合があります。また、音質が悪いと精度が下がり、後から手動で修正が必要になることもあります。

誤解3:AIに会議の音声を直接聞かせることができる

一般的なChatGPTの標準的な使い方では、音声ファイルを直接貼り付けて文字起こしさせることはできません(一部の有料プランや特定サービスでは対応しているものもありますが、機能は変化することがあります)。基本は「音声→文字起こしサービス→テキスト→AIで整形」という流れです。


7. 使うときの注意点

社外秘・機密情報の取り扱いに注意する

無料・有料を問わず、外部のAIサービスに会議の内容を貼り付けるということは、その情報がサービス事業者のサーバー(=データを保管・処理するコンピューター)に送信されることを意味します。取引先との交渉内容、人事評価、財務情報など、社外に出るべきでない内容を含む会議には、安易に外部のAIサービスを使わないよう、社内でルールを決めておくことが大切です。

無料サービスへの過度な依存に注意する

無料プランはいつでも仕様が変更・終了する可能性があります。業務で継続的に使うつもりであれば、有料プランの利用や、導入時に利用規約(=サービスを使う際に同意するルールの文書)を確認することをおすすめします。

「AIが言ったから正しい」は禁物

AIは、もっともらしく見える間違いを出力することがあります。議事録の内容が実際の会議と合っているかどうかは、参加者が確認する仕組みを社内で設けるようにしてください。


8. あわせて知っておきたい用語・サービス

  • Notta(ノッタ)(=音声・動画ファイルやリアルタイムの会話を自動で文字起こしするサービス。日本語対応で中小企業での導入事例も多い)
  • AmiVoice(アミボイス)(=国産の音声認識サービス。日本語の精度が高く、業種別に特化したプランもある)
  • ChatGPT(チャットジーピーティー)(=OpenAI社が提供する、テキストを入力して文章を生成・整形できる代表的な生成AIサービス)
  • Claude(クロード)(=Anthropic社の生成AIサービス。一度に処理できるテキスト量が多く、長文の整理に向いているとされる)
  • トークン(token)(=AIが文章を処理するときの単位。おおよそ「文字数の目安」と理解しておけば十分)
  • プロンプト(prompt)(=AIへの指示文。何を、どんな形式で出してほしいかを具体的に書くほど、出力の精度が上がりやすい)

9. もっと深く選ぶなら(AIツールのA-SCORE評価)

「結局どのツールを選べばいいか」は、Askive独自の6軸評価A-SCORE(=コスト・学習コスト・中小企業適合度・サポート・拡張性・信頼性の6項目を、専門家が同じ基準で採点した指標)で比べられます。人気投票ではなく、中小企業が本当に使えるかという視点で評価しています。

10. まとめ

AIを使った議事録作成は、「録音→文字起こし→AIで整形→人が確認」という流れが基本です。完全に自動化されるわけではありませんが、下書きをAIに任せることで、担当者の負担を実質的に減らせる可能性があります。最初の一歩は、身近な社内の定例会議ひとつを対象に、無料サービスで試してみることです。うまくいったら範囲を広げ、情報の機密度に応じたルールも少しずつ整えていきましょう。