1. この記事でわかること
- 営業資料の作成にAIが役立つ場面と、役立てにくい場面の違い
- 実際にどんな手順でAIを使えばよいか、具体的なイメージ
- 初心者が失敗しやすいポイントと、安全に使うための注意点
- 今日から試せる最初の一歩
2. 結論(さきに言うと)
営業資料の作成にAIは十分に活用できます。特に「構成案をゼロから考える」「文章の下書きを作る」「言葉をわかりやすく整える」といった作業で時間を短縮できます。ただし、AIが出力した内容をそのまま使うのではなく、必ず人が内容を確認・修正することが前提です。
3. 基本をやさしく解説
営業資料づくりの「どこが大変か」から考える
営業担当者が提案資料を作るとき、大きく分けて次の3つの作業が発生します。
- 何を伝えるか構成を考える
- 文章を書く・言葉を選ぶ
- 見た目を整える(デザイン・レイアウト)
このうち、AIが特に得意なのは1と2です。3については、AIツールによって対応できるものとできないものがあります。
AIはどうやって資料を手伝うのか
生成AIとは、たとえば「ChatGPT」や「Claude」といったチャット形式のサービスが代表例です。これらに対してプロンプト(=AIへの指示文)を入力すると、AIが文章を生成して返してくれます。
たとえば、チャット欄に次のように入力するだけで、資料の土台となる構成案や文章の下書きが得られます。
「中小企業向けに、自社の在庫管理システムを提案する資料の構成案を作ってください。相手は製造業の総務担当者で、ITに詳しくない方です。」
料理に例えると、AIは「食材を切って下ごしらえするキッチンアシスタント」のようなものです。完成品を出してくれるわけではなく、あとで自分が味を整えることが必要ですが、手間のかかる下準備をかなり省いてくれます。
具体的にどんなことができるか
- 構成案の作成: 「課題→解決策→実績→価格→まとめ」のような提案の流れを提示してもらえる
- 文章の下書き: 各スライドに入れる説明文を書いてもらえる
- 言い換え・言葉の整理: 専門用語が多い説明を、相手に伝わりやすい表現に直してもらえる
- FAQ(よくある質問と回答)の作成: 提案後に想定される質問とその回答案をリストアップしてもらえる
4. 初心者がつまずきやすいポイント
指示が曖昧すぎると、使えない文章が返ってくる
「営業資料を作って」とだけ入力しても、AIは何を作ればよいか判断できません。結果として、あまりにも一般的で実際には使えない内容が返ってくることがほとんどです。
プロンプト(=AIへの指示文)には、最低でも次の情報を含めると精度が上がります。
- 誰に向けた資料か(業種・担当者の役職・ITリテラシーなど)
- 何を提案するか(自社のどのサービス・商品か)
- 資料の目的(初回訪問用か、稟議(=社内で承認を得るための申請)用かなど)
- 文字数やスライド枚数の目安
一度で完成させようとしてしまう
AIとのやり取りは、一往復で終わりにする必要はありません。返ってきた文章が物足りなければ、「もう少し具体的に書いてください」「3点に絞ってください」と続けて指示できます。会話を重ねるほど、求めるものに近づいていきます。
出てきた内容をそのまま信用する
AIは流暢な文章を書きますが、内容が正しいとは限りません。数字・製品の仕様・法律に関わる記述などは、必ず自社の情報や公式の資料と照らし合わせて確認してください。
5. 中小企業の現場ではどう考えるか
中小企業では、営業担当者が資料作成・商談・顧客フォローを一人でこなすケースも珍しくありません。「資料を作る時間がない」「1件の提案資料に2〜3時間かかってしまう」という状況は多くの現場で起きています。
AIを活用する現実的な使い方として、次のような流れがあります。
ステップ1: 構成をAIに考えてもらう 提案の骨格をゼロから考えるのをAIに任せる。自分は「うちの場合はここが違う」と修正するだけでよい。
ステップ2: 各スライドの文章をAIに書いてもらう 構成案をもとに「このスライドに入れる文章を書いて」と依頼する。
ステップ3: 自社情報・実績・数字を書き加える AIが書いた文章は一般的な表現にとどまるため、自社の実績や具体的な数字、担当者ならではのエピソードを肉付けする。
ステップ4: PowerPointやKeynoteで仕上げる 最終的なデザインと体裁は、これまで通りのツールで行う。
このやり方であれば、「資料作成にかかる時間のうち、構成・文章を考える部分」をかなり短縮できる可能性があります。時間の節約効果は作業内容や習熟度によって異なりますが、慣れてくると下書きが手元に届くまでの時間は大きく変わります。
6. よくある誤解
誤解1: AIを使えば、提案資料が自動で完成する
実際は、AIが出すのはあくまでも「下書き」や「たたき台」です。自社の情報・顧客への理解・営業担当者の判断がなければ、資料として使えるものにはなりません。AIは「完成させるもの」ではなく「時間を節約するための補助道具」と考えるのが適切です。
誤解2: 専門知識がないと使いこなせない
プログラミングや技術的な知識は不要です。日本語で話しかけるだけで使えます。ただし、「よい指示を書く練習」は多少必要で、最初から思い通りの結果が出るとは限りません。繰り返し試しながら慣れていくものだと理解しておくと、焦らず取り組めます。
誤解3: 高価なツールを導入しなければ使えない
ChatGPTやClaudeは無料プランでも基本的な文章作成が可能です。まず無料の範囲で試してみて、業務上のメリットが実感できたら有料プランや他のツールを検討するという順序で十分です。
7. 使うときの注意点
顧客情報・社外秘の情報を入力しない
生成AIのサービスに入力した内容は、サービスの仕組みによっては学習データとして利用される場合があります。顧客の名前・連絡先・取引金額・社内の機密情報などは入力しないことを原則にしてください。資料の「型」や「文体の改善」を依頼するにとどめるのが無難です。
なお、ビジネス用途向けの有料プランには、入力したデータを学習に使用しない設定が用意されているサービスもあります。導入前に各サービスの利用規約を確認するか、社内のルールを決めたうえで使い始めることをお勧めします。
出力した内容の最終チェックは必ず人が行う
AIが書いた文章に誤った情報や不自然な表現が含まれることがあります。顧客に提出する前に、営業担当者が内容を一字一句確認する習慣をつけてください。
コストの見通しを持っておく
無料プランで始めることができますが、利用頻度が増えると有料プランの検討が必要になることもあります。月額料金はサービスによって異なるため、事前に確認しておきましょう。
8. あわせて知っておきたい用語・サービス
- ChatGPT(=OpenAIが提供するチャット形式の生成AIサービス。日本語でも自然な文章を生成できる)
- Claude(=Anthropicが提供する生成AIサービス。長い文章の処理や丁寧な文体が得意とされる)
- プロンプト(=AIへの指示文。何をどう伝えるかによって、出てくる結果が大きく変わる)
- テンプレート(=繰り返し使える雛形。プロンプトをテンプレート化しておくと、毎回の入力の手間が減る)
- ハルシネーション(=AIがもっともらしい嘘をついてしまう現象。数字や固有名詞に特に起きやすい。内容確認が必要な理由のひとつ)
9. もっと深く選ぶなら(AIツールのA-SCORE評価)
「結局どのツールを選べばいいか」は、Askive独自の6軸評価A-SCORE(=コスト・学習コスト・中小企業適合度・サポート・拡張性・信頼性の6項目を、専門家が同じ基準で採点した指標)で比べられます。人気投票ではなく、中小企業が本当に使えるかという視点で評価しています。
10. まとめ
営業資料の作成にAIは活用できます。特に「構成案を考える」「文章の下書きをつくる」「表現をわかりやすく整える」という作業で効果を感じやすいでしょう。一方で、自社情報の付け加えと最終確認は必ず人が行う必要があります。顧客情報の取り扱いにも注意が必要です。まずは社内の資料を使わず、架空の提案を想定して試してみることが、安全で気軽な最初の一歩になります。