見積もり作成、ChatGPTに渡すだけで下書きが出る
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Askiveデイリー #54 ・ 2026-06-13

見積もり作成、ChatGPTに渡すだけで下書きが出る

商談が終わった直後の机を思い浮かべてほしい。メモ帳には殴り書きの数字、価格表のExcelは別タブで開きっぱなし、過去の見積もりは「2024見積A社最終v3.xlsx」というファイル名で埋もれている。これらを一つに束ねて、お客様に出せる体裁の見積もりに仕上げる——この作業に、毎回30分から1時間が消えている。営業の本業は商談であって、書類の体裁を整えることではないはずなのに。

ここで提案したいのは、大げさなシステム導入ではない。商談直後の3つの情報を、ChatGPTに「渡す順番」を決めておくだけの話だ。この型を一度作れば、次の商談からは下書きが数分で立ち上がる。本記事ではその手順を、今日の商談後にそのまま試せる形で書く。

なぜ「ゼロから書く」が消えないのか

見積もり作成が時短されない理由は、能力ではなく情報の散らばり方にある。価格は価格表に、過去の言い回しは過去ファイルに、今回の条件は頭の中にある。人間はこの3つを行き来しながら手で組み立てるから、毎回フルマラソンになる。

ChatGPTのような大規模言語モデル(大量の文章を学習し、文脈に沿った文章を生成するAI)が得意なのは、まさにこの散らばった素材を一つの体裁にまとめる作業だ。Microsoftの公式AIブログ(2026-06確認)でも、M365 Copilotが「時間短縮だけでなく高付加価値業務の創出に寄与する」事例が複数紹介されている。書類の体裁づくりをAIに渡せば、人間は条件交渉という判断側に時間を寄せられる。

ここで大事な切り分けを一つ提示しておく。「組み立て」はAI、「決定」は人間。価格をいくらにするか、値引きをどこまで許すかは人間が決める。AIにやらせるのは、決まった情報を見積もりの形に並べる作業だけだ。この線引きを忘れると、AIが出した数字をそのまま信じて事故になる。

向いているのは、商品やサービスの種類がある程度決まっていて、毎回似た構成の見積もりを出す営業だ。逆に、案件ごとに完全に一品料理で価格構造が変わる業態には、本記事の型はそのままでは効きにくい。

渡す3点セットを決める

ChatGPTに渡すのは、次の3つだけでいい。これを本記事では「見積もり3点セット」と呼ぶ。

  1. 価格表(自社の単価・型番・条件)
  2. 過去の見積もり1枚(言い回しと体裁の見本)
  3. 今回の商談メモ(数量・納期・先方の要望)

この3つを順番に貼り付ければ、ChatGPTは「価格の根拠」「文章の型」「今回の中身」をすべて手元に持った状態で下書きを作れる。1つでも欠けると、AIは欠けた部分を勝手に補完する。これが後述する詰まりどころの正体になる。

実装手順

ステップ1:価格表を貼り付ける

まず価格表をテキストでChatGPTに渡す。Excelならセルを範囲選択してコピーし、そのまま貼り付ければ表として認識される。最初の指示文はこうする。

これから見積もりを一緒に作ります。
まず自社の価格表を渡します。この情報は価格の根拠としてだけ使い、
私が指示するまで見積もりは作らないでください。

【価格表】
(ここにExcelからコピーした価格表を貼る)

ここで詰まりやすい点:いきなり「見積もりを作って」と書くと、AIは価格表だけで見切り発車する。「指示するまで作らない」と先に止めておくのがコツだ。

ステップ2:過去の見積もりを見本として渡す

次に、過去に実際に出した見積もりを1枚貼る。金額や社名は架空のものに置き換えて構わない。狙いは文章の型と項目の並びをAIに覚えさせることだ。

次に、過去に出した見積もりの見本を渡します。
この文章の言い回し・項目の並び・注意書きの書き方を、
今回の見積もりでも踏襲してください。金額は参考にしないでください。

【過去の見積もり】
(ここに過去の見積もり本文を貼る)

ここで詰まりやすい点:「金額は参考にしないで」を入れないと、過去案件の値引き率を今回に引っ張ってくることがある。見本はあくまで体裁の見本だと明示する。

ステップ3:今回の商談メモを渡して下書きを依頼する

最後に、今日の商談で決まった条件を渡す。殴り書きで構わない。AIが箇条書きを整理してくれる。

最後に今回の商談メモを渡します。
これを元に、先ほどの価格表で単価を確認し、過去見本の体裁で
見積もりの下書きを作ってください。

条件:
- 単価は必ず価格表の数字を使う(推測で埋めない)
- 価格表にない項目は「要確認」と明記する
- 合計金額は税抜・税込の両方を出す

【商談メモ】
- A社向け、業務用エアコン10台
- 設置工事込み、納期は今月末希望
- 既存機の撤去も要望あり
- 先方予算は1台あたり15万円前後と発言

ここまで渡せば、価格表の単価を反映し、過去の体裁に沿った下書きが返ってくる。

ここで詰まりやすい点:「価格表にない項目は要確認と明記」を必ず入れる。商談メモに出てきた「撤去」が価格表に載っていない場合、これがないとAIがそれらしい撤去費用を創作する。架空の数字が混じった見積もりほど危ないものはない。

何が出れば成功か

成功した下書きには、次の3つが揃っている。

  • 単価がすべて価格表の数字と一致している(自分の価格表と照合できる)
  • 価格表にない項目に「要確認」とラベルが付いている
  • 税抜・税込の合計が両方出ている

逆に、見覚えのない端数の単価が並んでいたら、それはAIの創作だ。その場で「この単価の根拠は価格表のどこですか」と聞き返せば、AIは根拠を示せず「推測でした」と認める。根拠を聞き返すこの一手は、毎回入れる検算として習慣にしてほしい。

職種別の活用シーン

営業担当(最も頻度が高い)

毎日の商談後がそのまま対象になる。

  • Before:商談メモ・価格表・過去ファイルを往復しながら手作業で組み立て、1件45分〜1時間
  • After:3点セットを貼って下書きを受け取り、単価を照合して微修正、10〜15分
今日の商談メモから見積もり下書きを作ってください。
単価は渡した価格表のみを使い、表にない項目は「要確認」と明記、
合計は税抜・税込の両方を出してください。
(商談メモを貼る)

営業事務(複数営業の見積もりを巻き取る場合)

営業から口頭やチャットで来た断片を、見積もりの体裁に起こす作業を担うことが多い。

  • Before:営業ごとに違う書式の依頼を解読し、毎回ゼロから清書、1件30〜40分
  • After:定型の見本を1枚AIに覚えさせ、依頼内容を流し込む、10分前後
以下の依頼内容を、添付した社内標準フォーマットの見積もりに
起こしてください。不足情報は「営業に要確認」として箇条書きで
末尾にまとめてください。
(依頼内容を貼る)

末尾に「要確認リスト」を出させることで、営業への差し戻しが一度で済む。

若手後継者・兼務の社長(見積もりの型そのものを整えたい場合)

担当が毎回バラバラの体裁で出している状態を、標準化したいケース。

  • Before:人によって書式も注意書きもバラバラで、統一に着手できない
  • After:過去見積もり数枚をAIに渡し、共通の型を抽出させて標準フォーマットの叩き台を作る
これから過去の見積もりを3枚渡します。
項目の並び・注意書き・支払い条件の書き方を比較し、
今後の社内標準として使える見積もりフォーマットの叩き台を
1つにまとめてください。各社員でバラついている点も指摘してください。
(過去見積もりを3枚貼る)

属人化していた「あの人にしか書けない見積もり」を、共通の型に落とす作業をAIが下支えする。

今日からの3ステップ

  1. 今日の商談後:価格表をテキストでコピーできる形にしておく(Excelの該当範囲を選択するだけ)
  2. 次の見積もり1件:本記事の3点セットを順番に貼り、下書きを1枚作ってみる。完璧を狙わず、まず1枚通す
  3. 今週中:出てきた下書きの単価を価格表と照合し、ズレた箇所を「価格表にない項目は要確認と明記」の指示に追記してテンプレ化する

見積もりAIの日本語の丁寧な手順解説は、まだ多くない。だからこそ、自社の価格表と過去見積もりという手元の素材を渡せるかどうかで差がつく。AIが汎用的に賢くなるのを待つより、自社の3点セットを渡す型を先に持っておくほうが早い。便利になるはずのツールが、渡す情報を整えないと毎回ちぐはぐな下書きを返す——その手間を一度の準備で消すのが、今日の1アクションだ。

本記事はAI編集を経たのち、編集長が事実確認と品質チェックを実施しています。