総務の問い合わせ返信、ChatGPTに渡す手順を固定する
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Askiveデイリー #72 ・ 2026-06-22

総務の問い合わせ返信、ChatGPTに渡す手順を固定する

午前9時15分。総務の机のメールソフトには、昨夜から朝にかけて届いた問い合わせが12通並んでいる。「健康診断の日程を教えてほしい」「経費精算の締め日はいつか」「取引先からの請求書の宛名を変えたい」——どれも難しくはない。難しくはないが、一通ずつ「お世話になっております」から書き始めると、気づけば昼になっている。総務の問い合わせ対応がしんどいのは、一件が重いからではなく、軽い件が数で殴ってくるからだ。

この記事では、その軽い件の返信下書きをChatGPTに任せる手順を、毎回ブレないように「固定する」ことに絞って書く。今日の午後、目の前の1通で試せる粒度まで落とす。

なぜ「固定」が要るのか——その場の思いつきは続かない

AIに返信を書かせる、という話自体は新しくない。問題は、毎回違うことを毎回その場で打ち込んでしまう点にある。

ある日は「丁寧に返信して」、別の日は「このメールの返事考えて」。指示がブレれば、出てくる文面もブレる。敬語が過剰だったり、社名が抜けたり、締め切りの言い回しが日によって変わったりする。返信の品質が、その日の自分のプロンプトの気分に依存する状態だ。これでは「AIに任せた」とは言えず、毎回出力を直す手間が増えるだけで、かえって遅くなる。

だから狙うのは、賢い指示文を一発で当てることではない。毎回同じ枠に流し込むだけで、毎回そこそこ整った下書きが出る状態をつくることだ。この記事ではこの考え方を「返信テンプレ封筒」と呼ぶ。封筒(枠)はいつも同じ。中に入れる問い合わせ本文だけ差し替える。封筒さえ用意すれば、思いつきで書く工程が消える。

誰に向く話か。社内外から定型に近い問い合わせが毎日届く総務・庶務・バックオフィス兼任の人。逆に、毎回まったく違う交渉文や、法的判断を含む文面を書く人には、この「固定」は向かない。そこは型にはまらないからだ。

封筒の中身——コピペで使う固定プロンプト

まず、ChatGPTに最初に一度だけ渡す「封筒」の全文を置く。無料版でも有料版でも動く。これをメモ帳かChatGPTのカスタム指示欄に保存しておき、毎朝の起点にする。

あなたは当社の総務担当のアシスタントです。
これから問い合わせメールの本文を渡すので、返信の「下書き」を作ってください。

【出力ルール】
1. 件名案を1行、本文を続けて出す
2. 文体は「丁寧だが冗長でないビジネス敬語」
3. 不明な情報(日程・金額・担当者名など)は
   勝手に埋めず【要確認:〇〇】と角括弧で残す
4. 社外向けか社内向けかを冒頭で判定し、
   社内なら「お疲れさまです」、社外なら
   「お世話になっております」で始める
5. 結びは社外「何卒よろしくお願いいたします」、
   社内「よろしくお願いします」
6. 1通あたり200字以内を目安にする

【当社の固定情報】
- 会社名:(自社名を記入)
- 経費精算の締め日:毎月末日
- 問い合わせ窓口の営業時間:平日9:00-17:30

この封筒を理解したら「準備完了」とだけ返してください。
以降、私が貼るメール本文に対して下書きを返してください。

【当社の固定情報】の部分が肝になる。よく聞かれる事実をここに並べておくと、ChatGPTがその数字を本文に織り込んでくれる。毎回手で書いていた「締め日は末日です」が自動で入る。

ここで詰まりやすい点(1):固定情報を最初から欲張って20行も入れると、AIが無関係な情報まで返信に詰め込むことがある。最初は「月に3回以上聞かれる事実」だけに絞る。育てるのは後でいい。

実際の1通を流す——午後にやる手順

封筒を渡して「準備完了」が返ったら、あとは届いたメール本文を貼るだけだ。たとえばこう貼る。

(社外)取引先A社の田中様より。
「先日の請求書、宛名が旧社名のままでした。
新社名で再発行をお願いできますか」

これに対して返ってくる下書きは、おおむねこうなる。

件名:請求書再発行の件

お世話になっております。(自社名)でございます。
ご指摘いただきました請求書の宛名につきまして、
新社名にて再発行のうえ、【要確認:送付日】までに
お送りいたします。
お手数をおかけし申し訳ございません。
何卒よろしくお願いいたします。

【要確認:送付日】が残っている点が、この封筒の設計意図だ。AIは送付日を知らない。知らないことを勝手に「明日中に」などと埋めると、それが事故になる。埋めずに穴を開けて残すことで、人間が最後に数字だけ入れて送れる。

ここで詰まりやすい点(2):貼り付けるとき、メール全文をそのままコピーすると署名や過去のやり取りまで混ざり、AIが混乱する。要件の2〜3行だけ抜いて貼ると精度が上がる。慣れると、この「要件抜き」自体が頭の整理になる。

ここで詰まりやすい点(3):個人名・取引先名・金額など、外に出したくない情報は仮名に置き換えて貼る。「田中様」を「A様」に、具体的な金額を「◯円」にするだけでいい。返信を貼り戻すときに実名へ戻す。社内ルールで生成AIへの情報入力が制限されている場合は、ここを必ず先に確認する。

何が出れば成功か

成功の判定は単純だ。返ってきた下書きを見て、直す箇所が「角括弧の中だけ」になっていれば合格である。送付日や担当者名を入れて、固有名詞を戻して、そのまま送れる状態。

逆に、敬語ごと書き直したくなる、社内なのに社外文体で出てくる、といった場合は封筒のルールが効いていない。そのときは封筒の該当ルールに一文足す。たとえば社内外の判定が外れるなら、貼り付け時に「(社内)」「(社外)」を頭に付ける運用にする。封筒は固定だが、運用の前置きで補える。

職種・場面別の使いどころ

総務の中でも、問い合わせの種類によって効き方が変わる。業務頻度の高い順に並べる。

1. 社内問い合わせ対応(ほぼ毎日) 「経費の締め日は」「年末調整の書類はどこ」といった、答えが決まっている質問への返信。Before:一件ずつ手打ちで1通5分、10通で50分。After:封筒に固定情報を入れておけば1通あたり下書き20秒+確認で1分、10通で15分前後。1日あたり30分前後が浮く計算になる。

(社内)営業部より。
「先月分の交通費精算、いつまでに出せばいいですか」

2. 社外の事務連絡(週数回) 請求書の宛名変更、書類の送付依頼、日程調整の一次返信。Before:相手の会社名と文体に気を使い1通10分。After:封筒の社外文体ルールで型が決まり、3分前後。

(社外)B社の佐藤様より。
「見積書のPDF版を改めて送っていただけますか」

3. 採用・問い合わせフォームへの一次返信(不定期) 求人や問い合わせフォームに届いた初回連絡への、受領のお礼と次のステップ案内。Before:毎回ゼロから書いて15分。After:受領文の型が出るので、日程だけ差し込んで5分。

(社外)採用応募フォームより。
「中途採用の経理職に応募したい。書類の送り先を知りたい」
への、受領と次の案内の下書きを。

いずれも、Afterで残る仕事は「角括弧を埋める」「実名に戻す」だけになる。考える工程ではなく、確認する工程に変わる。ここが、返信業務をAIに渡す本当の意味だ。文章を書く仕事から、文章を点検する仕事への移行である。

今日からの3ステップ

黎明期だけあって、総務の問い合わせ返信に特化した日本語の手順解説はまだ多くない。だからこそ、自分の手元で固定する価値がある。

  1. 今日:上の封筒プロンプトをコピーし、【当社の固定情報】に「月3回以上聞かれる事実」を3つだけ入れて、ChatGPTに一度渡す。「準備完了」が返るのを確認する。
  2. 今日の午後:実際に届いた軽い問い合わせを1通、要件2〜3行に削って貼る。出てきた下書きの「直した箇所」をメモする。
  3. 今週中:直した箇所が毎回同じなら、その修正を封筒のルールに一文追記する。これで封筒が自分の会社仕様に育つ。

封筒は一度作れば、明日も来週も同じものを使える。総務の朝の12通が、書く対象から点検する対象に変われば、午前が昼に飲み込まれることは減っていく。

本記事はAI編集を経たのち、編集長が事実確認と品質チェックを実施しています。