営業の見積もり、ChatGPTに渡す文章を1つ固定する
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Askiveデイリー #80 ・ 2026-06-27

営業の見積もり、ChatGPTに渡す文章を1つ固定する

金曜の夕方、見積もり依頼のメールが3件たまっている。一件あたり過去案件のExcelを開き、似た条件を探し、単価を引き写し、文面を整える。気づけば1件30分、3件で90分。退社時刻が後ろにずれていく——これは特殊な事例ではなく、見積もり作業の標準的な風景だ。

ここで多くの人が試すのが「ChatGPTに見積もりを作ってもらう」だが、たいてい一度で諦める。理由は単純で、毎回ゼロから指示文を打ち直しているからだ。今日提案したいのは、ツールを増やすことでも新機能でもない。ChatGPTに渡す文章を1つに固定する、それだけだ。

なぜ「毎回うまくいかない」が起きるのか

ChatGPTの回答が安定しない最大の原因は、AIの性能ではなく、こちらの入力がその都度バラバラなことにある。月曜は「見積もり作って」、水曜は「以下の条件で金額出して」、金曜は急いでいて「これいくら?」。指示の形が違えば、出てくる形も違う。比較も再利用もできない。

人間は、毎回違うことを言っているという自覚を持ちにくい。脳は「いつも同じように頼んでいる」と感じるよう都合よく記憶を整えるからだ。だが実際の入力ログを並べると、文面は驚くほど揺れている。揺れているのは入力であって、AIではない

ここで提案する型を、「見積もりテンプレ文」と呼ぶことにする。一度作って単語登録やメモアプリに保存し、案件情報だけ差し替えて貼り付ける。それだけで、出力の形が毎回そろう。

誰に効いて、誰には不要か

効くのは、自社の単価表や過去見積もりが手元にある営業担当だ。逆に、見積もりが毎回完全オーダーメイドで前例がまったく効かない受託開発や、金額が1円単位で監査される業種では、下書き止まりと割り切る必要がある。AIが出すのはあくまでたたき台で、最終確認は人間がやる。この線引きを最初に握っておくと、後で揉めない。

ステップ1:固定する「見積もりテンプレ文」を作る

まず、以下をそのままコピーして使う。山括弧の部分だけ案件ごとに差し替える設計になっている。

あなたは当社の営業アシスタントです。以下の条件で見積もりの下書きを作成してください。

# 案件情報
- 顧客名:<株式会社サンプル>
- 商品/サービス:<オフィス清掃 月4回>
- 数量/期間:<3ヶ月契約>
- 参考単価:<1回あたり12,000円>
- 特記事項:<初回のみ床ワックス込み>

# 出力ルール
1. 見積もり明細を表形式(項目/単価/数量/金額)で出す
2. 小計・消費税10%・合計を分けて計算する
3. 金額は半角数字・カンマ区切りで表記する
4. 表の下に、提案メールに使える3〜4行の添え文を付ける
5. 不明な前提があれば、勝手に決めず「確認事項」として箇条書きする

ここで詰まりやすい点:参考単価を空欄のまま渡すと、ChatGPTが相場を推測した架空の金額を平気で埋めてくる。単価は必ず自社の数字を入れる。分からない項目は空欄ではなく「未定」と書いておくと、ルール5で確認事項に回してくれる。

ステップ2:1件で試して、出力を確認する

テンプレに実際の案件を流し込んで送信する。返ってくるべきものは、(1)項目・単価・数量・金額の4列がそろった明細表、(2)小計/消費税/合計が分かれた計算、(3)提案メール用の添え文、(4)前提が欠けていれば確認事項。この4点が出れば成功だ。

ここで詰まりやすい点:消費税の計算が小計と合っているか、最初の1回だけは電卓で照合する。生成AIは文章生成が本業で、計算は付帯機能だ。12,000円×4回×3ヶ月の掛け算を、まれに取り違える。一度合っていれば、以降は同じテンプレなら計算ロジックも安定する。

ステップ3:自社の単価表を「貼り付け資産」にする

毎回単価を思い出すのが手間なら、よく使う商品の単価を10〜20行の一覧にして、テンプレの先頭に常時貼り付けておく。

# 当社標準単価(税抜)
- オフィス清掃(1回):12,000円
- 床ワックスがけ(1回):18,000円
- ガラス清掃(1㎡):800円
- 定期契約割引:3ヶ月以上で5%、6ヶ月以上で10%

この一覧を渡しておくと、ChatGPTは「定期契約割引:3ヶ月以上で5%」を自分で適用してくる。割引の付け忘れという、地味だが顧客の信頼を削るミスが減る

ここで詰まりやすい点:単価表を入れると割引まで自動適用される反面、適用条件を誤解することがある。出力の確認事項欄に「割引適用の可否」を必ず書かせるルール(ステップ1のルール5)が、この誤適用への保険になる。

職種別の活用シーン

営業担当(毎日):見積もり下書き

Before:過去Excelを開いて似た案件を探し、単価を引き写して文面を整える。1件30分。 After:テンプレに案件情報を貼り付け、出力を確認して微修正。1件10分。3件なら90分が30分になる計算で、中堅営業の半日が週ごとに戻ってくる

あなたは当社の営業アシスタントです。以下の条件で見積もりの下書きを作成してください。
# 案件情報
- 顧客名:< >
- 商品/サービス:< >
- 数量/期間:< >
- 参考単価:< >
- 特記事項:< >
# 出力ルール(前掲のルール1〜5をそのまま貼る)

営業事務(週2〜3回):見積もりから請求書文面へ転用

Before:確定した見積もりを見ながら、請求書の品目欄を手で打ち直す。1件20分。 After:見積もり明細をそのまま貼り、請求書文面に組み替えてもらう。1件5分。

以下は確定済みの見積もり明細です。これをもとに、請求書に記載する品目欄の文面を作成してください。金額は変更せず、敬体の請求案内文を3行付けてください。
<見積もり明細を貼り付け>

ここで詰まりやすい点:「金額は変更せず」を明記しないと、AICが端数処理を勝手にやり直すことがある。金額の固定は毎回書く

営業マネージャー(週1回):複数見積もりの条件チェック

Before:部下が出した見積もりを1件ずつ開き、割引や税計算の漏れを目視確認。10件で1時間。 After:見積もりテキストをまとめて貼り、ルール逸脱だけ指摘させる。10件で20分。

以下は当社営業が作成した見積もりです。各見積もりについて、(1)消費税10%が正しく計算されているか、(2)3ヶ月以上契約に割引が適用されているか、の2点だけをチェックし、問題がある見積もりのみ番号と理由を挙げてください。問題なければ「全件OK」とだけ返してください。
<見積もりを複数貼り付け>

この「全件OKならOKとだけ返す」という指定が効く。人間のレビューは、問題のない9件にも目を通して疲弊する。AIに先に弾かせれば、人は問題の1件だけ見ればいい。

同僚に広げるときの一言

このテンプレが個人の時短で終わるか、チームの標準になるかの分かれ目は、配り方にある。「ChatGPT便利だよ」では誰も動かない。動くのは、「この文章を案件情報だけ変えて貼ると、見積もりの下書きが出る。今日の1件で試してみて」という、行動が1つに絞られた渡し方だ。同僚が無関心なのは、やる気の問題ではなく、最初の1アクションが大きすぎるからにすぎない。

今日からの3ステップ

  1. 今日:上記の「見積もりテンプレ文」をコピーし、今日の見積もり1件で試す。出力の税計算だけ電卓で照合する。
  2. 今週:自社の標準単価10〜20行を一覧化し、テンプレの先頭に常時貼り付ける形にする。メモアプリか単語登録に保存する。
  3. 来週:同僚1人に「案件情報だけ変えて貼る」型として渡す。マネージャーなら、複数チェック用のプロンプトをレビュー工程に組み込む。

生成AIを使った見積もり効率化について、日本語で「テンプレを固定する」という最小の運用に絞った解説はまだ多くない。新しいツールを待つ必要はない。今あるChatGPTに渡す文章を1つ固定するだけで、金曜夕方の90分は今日から動かせる。

本記事はAI編集を経たのち、編集長が事実確認と品質チェックを実施しています。