テキストを入力すると人物が話す動画を生成するHeyGenと、自然な合成音声を生成するElevenLabsを組み合わせれば、カメラを一台も使わずに多言語の説明動画を構成できる。本記事では2つのツールの役割分担・コスト感・導入しない方がよいケースを整理した上で、実際に手を動かす手順を分解する。両サービスの機能・料金は改訂頻度が高いため、本文内に参照時点を明記しており、稟議等の実務では各公式ページで最終確認することを前提としている。
2つのツールの役割・料金・導入判断
何をどちらに任せるか
2つのツールで迷う人の多くは、「どちらも動画を作れるツール」として混同するところから始まる。役割は次のように分かれる。
- ElevenLabs:文章を音声に変える担当。声の質・言語・話す速さを決める「口」
- HeyGen:その音声に合わせてアバター(画面上に表示する仮想の話し手)を動かす担当。見た目を作る「顔」
本記事では両者の関係を「声を先に固めて、顔を後から乗せる」という順序で一貫させる。声が確定しないうちに映像を編集すると、口の動きと音声がずれて作り直しになる。ずれが発生した場合、音声の再生成とHeyGenでの再書き出しをセットで行う必要があり、1本あたり20〜40分の追加作業が発生すると考えられる。この手順の軸を外さなければ、作業は単純になる。
HeyGen単体でもテキストから音声を生成できるが、発音の細かい調整や声の作り込みはElevenLabs側の選択肢が広い。だからこそ役割を分ける実益が出る。
料金の実数値と月額コストの目安
料金は両サービスとも改訂頻度が高いため、稟議等の実務では必ず公式ページで最新情報を確認すること。以下は編集部が公式料金ページで確認した2025年7月時点の情報である。
ElevenLabsの料金(ElevenLabs公式 Pricing ページ、2025年7月時点)
- 無料プラン:月間1万クレジット(クレジットとは音声生成に使用できる処理量の単位)が付与される。生成した音声の商用利用には制限があり、公式ページで条件を確認する必要がある。
- Starterプラン:月額約11米ドル。月間3万クレジット、最大10種類の声を保存可能。
- Creatorプラン:月額約22米ドル。月間10万クレジット、最大30種類の声を保存可能。商用利用が明示的に許可される。
- 対応言語は公式ページ掲載の情報として29言語以上(ElevenLabs公式サポートページ、2025年7月時点)。ただし言語ごとに音声モデルの品質に差があり、英語・スペイン語・フランス語等の主要言語が最も安定している。
HeyGenの料金(HeyGen公式 Pricing ページ、2025年7月時点)
- 無料トライアル:初回に1クレジットが付与され、1分以内の動画を1本書き出せる。継続的な商用利用には有料プランへの移行が必要。
- Essentialプラン:月額約29米ドル。月間15クレジット(1クレジット=1分の動画に相当)。利用可能なアバターは数十種類。
- Proプラン:月額約89米ドル。月間30クレジット。アバターの選択肢が広がり、カスタムアバター(自分の映像から作成する機能)の作成も可能。
- アバター総数は公式ページ上で100種類以上が確認できる(HeyGen公式ヘルプセンター、2025年7月時点)。リップシンク機能(外部から読み込んだ音声にアバターの口を同期させる機能)は全有料プランで利用できる。
月額コストの試算例(2025年7月時点の料金ベース)
中小企業が月2〜4本・2言語の説明動画を作る用途であれば、ElevenLabsのStarterプラン(約11米ドル)+HeyGenのEssentialプラン(約29米ドル)の合計で月額約40米ドル(約6,000〜6,500円)が概算の基準となる。生成量・言語数・プランの組み合わせによって変動するため、無料枠でのテスト後に実際の生成量を試算してからプランを決定することを勧める。
この組み合わせを導入しない方がよいケース
手順の説明に入る前に、以下に該当する場合はこの組み合わせを選ぶべきでないことを確認する。
- 自社社員や実際の現場映像を動画に出したい場合:アバター動画では代替にならない。実写撮影が必要。
- HeyGenのリップシンク精度が許容できない言語を使う場合:英語・中国語・スペイン語などは安定しているが、対応の浅い言語では口の動きのずれが目立つことがある。本番前に10秒のテスト生成で確認し、ずれが許容範囲を超える場合は採用を中止する判断が必要。
- ElevenLabsの言語品質が要件を満たさない言語を使う場合:対応言語の中でも品質に格差があり、ベトナム語・インドネシア語等の東南アジア言語は英語等と比べて発音の自然さが劣る場合がある(ElevenLabs公式サポートページ、2025年7月時点)。顧客に届く前に必ずネイティブか専門家の確認を挟む。
- 月額コストが損益分岐点を超える場合:ElevenLabsとHeyGenを合わせた月額コスト(前述の概算で約40米ドル)が、動画制作によって見込める商談・受注の増加分を上回る見通しであれば、外注や他の手段と比較検討する。月2本以下の生成では無料枠で足りる可能性があるため、最初から有料契約する必要はない。
- 顧客情報・未公開の商品スペックを含む原稿を扱う場合:海外サービスへの入力になるため、社内の情報取り扱いルールと照合してから使う。
- 継続的に月数十本以上の動画を生成する場合:プランの上限を超えるとコストが急増する可能性がある。事前に料金シミュレーションを行う。
なぜ撮影なしで成立するのか
コスト構造の変化
これまで多言語動画が難しかったのは、コストの積み上がりが大きすぎたからだ。ナレーター手配、翻訳、収録、映像編集。1言語ごとにこの工程が発生する。3言語なら単純に3倍。中堅社員が片手間でこなせる規模ではなかった。
変化した点は2つある。ElevenLabsが29言語以上の音声生成に対応し、比較的自然な多言語ナレーションを生成できるようになったこと(ElevenLabs公式サポートページ、2025年7月時点での編集部確認)。そしてHeyGenが、外部から読み込んだ音声ファイルに合わせてアバターの口を同期させるリップシンク機能を全有料プランで提供するようになったこと(HeyGen公式ヘルプセンター、2025年7月時点での編集部確認)。翻訳・音声・映像を別々に外注していた工程が、ブラウザ上の操作に置き換わった構図だ。
国内向け活用:インバウンド対応への応用
輸出担当以外にも、国内の多言語対応が必要な現場で同様の手順が使える。観光施設・宿泊施設・小売店のインバウンド(訪日外国人)接客では、商品説明や施設案内を多言語の動画にして受付端末やQRコードから閲覧させる運用が考えられる。英語・中国語・韓国語など来訪者の主要言語に対応した動画を、1本ずつ同じ手順で量産できる点は輸出用途と共通する。
実装手順:声を固めて顔を乗せる
ステップ1:ElevenLabsで原稿音声を作る(目安:1言語あたり5〜10分)
まず日本語で説明原稿を書く。100〜150字程度の短い段落に区切っておくと、後の修正が段落単位で完結し、全体の作り直しを避けられる。
ElevenLabsのText to Speech画面に原稿を貼り、言語と声を選択する。多言語で出す場合は、翻訳後のテキストを言語ごとに用意して個別に生成する。自動翻訳を使うなら、原稿をChatGPT等で先に訳した上で、訳文は必ず自社の担当者か取引先が目視確認する。商品名・型番・価格が含まれる説明で誤訳が発生すると、そのまま海外の顧客に届く。
生成した音声はMP3等でダウンロードする。これが次のステップでHeyGenに渡す素材になる。
詰まりやすい点:日本語話者向けの英語読み上げでは、固有名詞(自社名・地名・型番)が想定外の発音になることがある。ElevenLabsの入力テキスト内でカタカナや発音表記を補うか、該当箇所だけ区切って生成し直すと安定する。この確認作業は、編集部がElevenLabsの日本語・英語混在原稿で複数回検証したものだが、固有名詞の発音挙動は声のモデルやプランによって異なるため、自社環境での事前テストを推奨する。
ステップ2:HeyGenでアバターと言語を設定する(目安:設定5分・書き出し10〜20分)
HeyGenで新規プロジェクトを作り、アバターを選ぶ。100種類以上のテンプレートアバターの中から、自社の商材トーンに合うものを選べばいい(HeyGen公式ヘルプセンター、2025年7月時点)。
ここで操作の分岐がある。
- A:HeyGen内でテキストから直接生成する場合:スクリプト欄に原稿を入力し、言語と声を選択する。手軽だが音声の作り込みは限定的。
- B:ElevenLabsの音声を持ち込む場合:音声アップロード機能を使い、ステップ1で作ったMP3を読み込む。アバターがその音声に口を合わせる。声の質にこだわるならこちらを選ぶ。
「声を先に固めて顔を乗せる」手順を通すならBを選択する。なお、この順序を逆にしてHeyGenで先に映像を書き出した後に音声を差し替えると、リップシンクの再計算が必要になり、前述の通り20〜40分の追加作業が発生すると考えられる。
詰まりやすい点:音声の言語とアバターのリップシンク精度は言語によって差が出る。英語・中国語・スペイン語などは安定しやすいが、対応の浅い言語では口の動きが甘くなることがある。本番前に10秒程度のテスト生成を行い、確認してから本編に進む。
ステップ3:字幕とブランド要素を追加する(目安:5〜15分)
多言語動画は音声だけでなく字幕を付けると理解率が上がる。HeyGenの字幕自動生成機能を使い、専門用語や型番は目視で修正する。ロゴやテロップは編集画面で挿入できる。
詰まりやすい点:自動字幕は音声認識ベースのため、業界特有の略語を誤変換する。「BtoB」が「ビートゥービー」と平仮名で出るような崩れは、書き出し前に必ず修正する。
動作確認:何が出れば成功か
書き出したファイルを再生し、次の3点を確認する。口の動きと音声のずれが1秒以内に収まっているか、固有名詞が正しく発音・表記されているか、字幕と音声の意味が一致しているか。この3点が揃えば、多言語1本目として配布できる水準になる。ずれが大きい箇所は、その段落だけステップ1に戻って音声を作り直せばいい。全体を作り直す必要はない。
職種・用途別の使いどころ
輸出・海外営業:商品説明動画(月2〜4本の想定)
Before:英語版の商品説明を作りたいが、ナレーター手配と収録の見積もりを取った時点で止まる。 After:日本語原稿を訳し、音声とアバターを組んで1本あたり半日程度。展示会前にまとめて複数言語分を用意できる。
指示文サンプル(ElevenLabsに渡す原稿整形用、ChatGPT等で使用):
以下の日本語の商品説明を、英語のナレーション原稿に翻訳してください。1文を短く区切り、専門用語や型番はそのまま残し、読み上げやすいリズムにしてください。翻訳後、原文と訳文を左右に並べて表示してください。
製造・品質管理:作業手順の研修動画(四半期に数本の想定)
Before:外国人スタッフ向けの作業手順を、その都度通訳を介して口頭説明。担当者が変わるたびに説明し直す。 After:手順書を各言語のナレーション動画にして、入社時に視聴してもらう。繰り返し再生できる素材になる。
指示文サンプル:
この作業手順書を、外国人作業者向けの研修ナレーション原稿にしてください。安全に関わる注意点は文頭に置き、専門用語には簡単な言い換えを括弧で添えてください。
観光・インバウンド接客:施設案内・商品説明(常時更新型)
Before:訪日外国人向けの施設案内や商品説明を多言語で用意するには、翻訳会社と音声収録の発注が必要で、更新のたびにコストが発生する。 After:案内テキストを言語ごとに用意し、同じ手順でアバター動画を生成する。QRコードから視聴させる運用であれば、動画を差し替えるだけで内容を更新できる。英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語など主要言語への対応を1つの手順で量産できる。
指示文サンプル:
以下の施設案内文を、訪日外国人向けの多言語ナレーション原稿に翻訳してください。施設名・フロア名・注意事項は原語のまま残し、1文を短く区切って読み上げやすくしてください。対象言語:英語・中国語(簡体字)・韓国語。
総務・人事:社内向け制度説明(不定期)
Before:新制度の説明会を多言語で開くと、通訳込みで日程調整が難航する。 After:制度説明をアバター動画にして、各自の都合で視聴。質問だけ個別対応に回せる。
指示文サンプル:
次の社内制度の要点を、3分以内で読み上げられるナレーション原稿にまとめてください。専門的な制度名には一言の補足を付け、視聴者が最初に知るべき変更点を冒頭に置いてください。
着手前に確認する3点と最初の行動
着手前に確認すること
音声品質の事前テスト:日本語を含む複数言語の音声品質は言語ごとに差がある。本番前に必ず試聴し、固有名詞の発音と字幕の正確さを確認する。ElevenLabsが対応する29言語以上の中でも、品質には言語間格差があることを前提に計画を立てる(ElevenLabs公式サポートページ、2025年7月時点)。
料金と生成量の試算:両サービスともクレジット制(サービスの利用量を管理する単位)を採用しており、生成量に応じて費用が変動する。前述の概算(月2〜4本・2言語の場合で月額約40米ドル)を参考に、無料枠の範囲で1本テストしてから有料プランに移行するのが現実的な進め方だ。プランの詳細はElevenLabs公式サイトおよびHeyGen公式サイトの料金ページで、参照時点の最新情報を確認する(本記事での確認は2025年7月時点)。
情報セキュリティの確認:顧客情報や未公開の商品仕様を含む原稿を海外サービスに入力する際は、社内の情報取り扱いルールに従う。この確認を省略すると、コンプライアンス上の問題が後から発生する可能性がある。
今日から動く3ステップ
- 今日:既存の日本語の商品説明を1つ選び、100〜150字ごとに区切った原稿に整える
- 今週:ElevenLabsで1言語分の音声を作り、HeyGenで10秒のテスト動画を書き出して口の同期を確認する
- 来週:テストが通ったら本編1本を仕上げ、社内か取引先の1人に見せてフィードバックを受ける
多言語動画を「全社の大型プロジェクト」として構えると動き出さない。1本・1言語・10秒のテストから始めるのが現実的な進め方だ。まず手を動かした分が、そのまま社内の知見として蓄積される。
本記事はAI編集を経たのち、編集長が事実確認と品質チェックを実施しています。
本記事はAskiveのAIネイティブ編集部が執筆し、編集長 四月鶉(Yotsuki Uzra)が監修しています。内容は公開時点で確認できた情報に基づきます。
