AIで作った販促画像に著作権リスク、FireflyとMidjourneyを商用利
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Askiveデイリー #166 ・ 2026-08-10

AIで作った販促画像に著作権リスク、FireflyとMidjourneyを商用利

「AIで作った画像を、そのまま販促に使って大丈夫なのか」。この問いに、はっきり首を縦に振れる中小企業の担当者は少ない。作る技術はもう手元にある。怖いのは作った後だ。ECサイトのバナーに使い、チラシに刷り、SNSに流した半年後、見知らぬ相手から「その画像、うちの著作物に似ていますね」という一通が届く。

この恐怖が時短メリットよりも先に立つのは、感情的な過剰反応ではなく、法的根拠がある。日本の著作権法では、第30条の4(情報解析を目的とした著作物利用)がAI学習データの利用を一定の範囲で許容しているが、生成物が既存の著作物と「類似」と判断された場合には侵害リスクが残る。商用利用であれば同法第32条(引用の条件)や翻案権(第27条)も絡む。「AIが生成したから問題ない」という論理は、現行法の解釈では成立しない。

だからこの記事では、代表的な2つのツール、Adobe Firefly(アドビが提供する商用利用を前提に設計された画像生成AI)とMidjourney(Discord上で動作する高精細画像生成AI)を、商用利用の著作権リスクという一点に絞って比較する。

結論の判定軸を先に置く。選ぶ基準は3つだ。(1) 学習データが商用利用を前提に集められているか、(2) 万一のときの補償があるか、(3) 出力の独自性を自分でコントロールできるか。この3軸のうち、自社がどこを最も恐れているかで答えが変わる。記事末尾に簡易フローチャートを用意しているので、読後の意思決定に活用してほしい。

学習データの出どころを比較する

Adobe Fireflyの学習データ設計

画像生成AIの著作権リスクは、突き詰めると「何を学習して作られたか」に集約される。他人の著作物を無断で大量に学んだモデルは、出力にその痕跡がにじむ可能性がある。

Adobe Fireflyは、この点を設計思想の中心に据えている。Adobeが公式に説明している学習元は、同社が権利処理済みで保有するストックフォト(Adobe Stock)、著作権が消滅したパブリックドメイン素材、およびライセンスが明確なコンテンツに限定される(Adobe公式サポートページ「Adobe Firefly generative AI FAQ」、2025年5月時点)。つまり「出どころが説明できる」状態を製品の差別化軸として打ち出している。

Midjourneyの学習データと不透明性

Midjourneyは、学習データの詳細な内訳をAdobeと同水準では公開していない。同社の利用規約(Midjourney Terms of Service、2024年8月改定版)には、モデルの訓練に用いたデータセットの構成を個別に開示する義務は記載されておらず、どのような著作物が学習に使われたかをユーザー側から追いにくい状態にある。高い描写力の裏側には、こうした不透明さが存在すると考えられる。

ここで言えるのは、「訴えられたときに"うちは権利処理済みの素材だけで作った"と説明できるか」という一点で、両者は立ち位置が明確に異なるということだ。取引先審査や広告審査で説明責任を負う立場なら、この差は実務上の重さを持つ。

問題発生時の補償制度を確認する

Adobe FireflyのIP補償の仕組みと適用条件

中小企業の担当者が本当に恐れているのは、確率ではなく金額だ。訴訟リスクが低いと言われても、当たったときにいくら払うのか分からなければ安心できない。

Adobe Fireflyは、対象プランの商用利用において、生成画像が第三者の著作権を侵害したと主張された場合の IP補償(IPインデムニティ、知的財産侵害請求に対してAdobeが一定条件で法的責任を引き受ける仕組み) を提供している。Adobeが公開しているIP補償の概要(Adobe公式「IP Indemnity for generative AI features」、2025年5月時点)によれば、主な適用条件は以下のとおりだ。

  • 対象プラン:Adobe Creative Cloud法人向けプランおよびAdobe Expressビジネスプラン等、補償対象として明示されたプランに限る。個人向け無料プランは対象外。
  • 適用の前提:出力をそのまま、または軽微な編集のみを加えて商用利用した場合に限る。
  • 免責事項:ユーザーが意図的に既存の著作物を再現させるようなプロンプトを入力した場合は補償の対象外になる可能性がある。
  • 上限額:Adobeは上限額を公式文書で数値として明示していないため、具体的な金額は契約条件の確認が必要だ。

「作り手だけが丸裸で責任を負う」構造ではない点は大きいが、自社の契約プランが補償対象に含まれるかは必ず契約画面および担当営業窓口で確認する必要がある。

MidjourneyにIP補償がない場合のリスク

Midjourneyには、Adobeと同等の包括的なユーザー向けIP補償の仕組みは、現時点で公式に確認できる形では見当たらない(Midjourney Terms of Service、2024年8月時点)。利用規約上、生成物の扱いや責任の所在はプランによって条件が異なる。有料プランでは商用利用が認められているが、権利侵害が発生した際の補償はユーザー自身が負担する構造だ。

補償の有無は、保険に入っているかどうかの違いに近い。仮に一度の権利トラブルで弁護士費用と和解金を合わせて数十万円規模がかかるとする(前提:小規模な民事和解を想定した試算)。この一発を自社で丸ごとかぶるか否かが、補償の有無で分かれる。ゼロ情シスで法務も兼任という会社ほど、「見えている安心」の実務的価値は高い。

出力の独自性をコントロールできるかを評価する

学習データの絞り込みと表現範囲の関係

意外に見落とされがちなのが、この3つ目の軸だ。学習データがクリアでも、出力が既存の有名キャラクターや特定作品に酷似していれば、それはそれで別のリスクになる。ここはツールの性能とは別に、使い手の指示(プロンプト)の設計の問題でもある。

具体例で言う。「あの人気アニメ風の猫」と入力すれば、どちらのツールでも既存作品を想起させる画像に寄っていく。Fireflyは学習データを絞っている分、特定作品の再現度が上がりにくい傾向があると考えられる。逆にMidjourneyは表現力が高い分、指示次第で既存作品に近づく力も強い。力の強い道具ほど、振り回し方を誤ったときの影響も大きい、という当たり前の話だ。

中小企業の商品画像に必要な独自性とは

中小企業の商品画像で必要なのは、たいていの場合「清潔感のある白背景の商品カット」や「季節感のあるバナー背景」であって、特定のクリエイターの作風の再現ではない。この用途に限れば、独自性のコントロールは指示をシンプルに保つだけで大半のリスクが回避できる。ツールの差より運用ルールの差 が効く領域だと押さえておきたい。

なお、どちらのツールを使う場合も、法務・契約・ブランドが絡む最終出力は人が確認し、既存の商標やロゴに酷似していないかを目視で照合する工程は外せない。AIが生成した画像は「確率的な出力」であり、著作権的安全性を判断する主体はあくまで人間だ。

Midjourneyの実務的な導入障壁を確認する

Discord操作が前提になるという問題

著作権リスク以前に、Midjourneyには中小企業の担当者にとって見落とされやすい導入障壁がある。2025年5月時点で、Midjourneyの主要な操作インターフェースはDiscord(ディスコード、主にゲームコミュニティ向けに普及したチャットプラットフォーム)経由が基本となっており、独立したWebアプリからの操作は一部機能に限られている(Midjourney公式ドキュメント、2025年5月時点)。

具体的には、専用のDiscordサーバーにアクセスし、ボット(自動応答プログラム)にテキストコマンドを入力して画像を生成する操作が求められる。社内のセキュリティポリシーによってはDiscordの利用自体が制限されているケースもあり、IT部門への確認が事前に必要になる。

Fireflyとの操作環境の差

一方Adobe Fireflyは、ブラウザからAdobe IDでログインするだけで利用できる。既存のAdobe Creative Cloudサブスクリプション(月額または年額の利用契約)に含まれているプランも多く、新規の外部サービス登録やプラットフォームの習得コストが低い。

操作環境のハードルは著作権リスクと同列で検討すべき導入判断の要素だ。担当者が操作を習得するまでの時間と、社内規程への対応コストも、ツール選択のコストとして計上する必要がある。

導入すべきでない条件を整理する

Midjourneyを導入すべきでないケース

以下の条件に当てはまる場合、Midjourneyの導入は慎重に検討する必要がある。

  • 取引先や広告媒体から、生成AIの学習データの出典を文書で説明するよう求められる可能性がある。
  • 社内に法務担当がおらず、権利侵害が発生した際の対応を外注する予算もない。
  • DiscordをはじめとするSNS系プラットフォームの利用が社内セキュリティポリシーで制限されている。
  • 生成画像の商用利用ガイドラインを定期的に確認・更新する担当者を設置できない。

Adobe Fireflyを導入すべきでないケース

逆に、以下の条件に当てはまる場合は、Fireflyが最適解にならないこともある。

  • 他社との差別化に直結する高い描写品質・表現の多様性が最優先で、補償や透明性よりもビジュアルの訴求力が売上に直結するビジネスモデルである。
  • すでにAdobe製品を一切使用しておらず、新たにサブスクリプションを追加するコスト対効果が合わない。
  • Fireflyの補償対象プランを契約する費用が予算上難しく、無料プランで商用利用を検討している(無料プランは補償対象外のため、補償なしでMidjourneyを使うのと実質的に同じリスク構造になる)。

ケース別の選択基準と導入判断フローチャート

4つのケースで選ぶ

ケースA:ECや小売で商品画像を毎週数十枚単位で量産したい会社。 説明責任と補償を優先し、Firefly寄りが無難だ。取引先審査や広告審査で「出どころ」を問われる場面が多く、権利処理済み素材のみで学習済み という説明が機能する。量産の速度より、事故の少なさを取る局面だ。

ケースB:印刷物やSNSで他社と差がつくビジュアル表現を武器にしたい会社。 描写力の高さが売上に直結するなら、Midjourneyの表現力は魅力になる。ただし補償が薄い前提で、社内に「既存作品を想起させる指示をしない」運用ルールと、公開前の目視チェック担当を必ず置くこと。Discordの利用可否も事前に確認する。

ケースC:法務も情シスも社長が兼任、チェック工数を割けない会社。 迷わずFirefly。理由は性能ではなく、判断工程を減らせるからだ。補償と学習データの説明が最初から用意されている状態は、確認作業そのものを軽くする。兼任担当にとって最大のコストは料金ではなく、判断に使う時間と神経だ。

ケースD:まず社内でAI画像生成に慣れたい、公開はまだ先の会社。 どちらでも試験利用は可能だ。ただし練習段階の画像を「なんとなく良かったから」と後日そのまま公開する流れが最も危ない。練習用フォルダと公開承認フォルダを分けるだけで、事故の芽は大幅に減る。

意思決定フローチャート

以下の順番で自社の状況を確認する。

  1. 取引先・広告媒体から学習データの出典説明を求められる可能性があるか? → はい:Fireflyを選ぶ。Midjourneyでは説明根拠を用意できない。 → いいえ:次の設問へ。

  2. 権利侵害が発生した際、法的対応費用を自社単独で負担できるか? → いいえ:Fireflyを選ぶ。IP補償の適用条件を契約前に担当営業に確認する。 → はい:次の設問へ。

  3. Discordの社内利用がセキュリティポリシーで認められているか? → いいえ:現時点ではFireflyを選ぶ。Midjourneyの操作環境が整わない。 → はい:次の設問へ。

  4. ビジュアルの表現品質が競合との差別化に直結する業種か? → はい:Midjourneyを選び、社内運用ルールと目視チェック体制を整備する。 → いいえ:Fireflyで十分な品質が得られると考えられる。

総括

判定軸は単純だ。「訴えられたときの説明と支払いを、自社だけで背負えるか」をまず自問する。背負える体力と法務知識があるなら、表現力でMidjourneyを選ぶ余地は十分ある。背負えない、あるいは判断に割く時間がないなら、補償と学習データの透明性が整ったFireflyに寄せる。

比較の本質は「どちらが優れた画像を出すか」ではなく、「事故が起きた後の世界を、どちらが軽くしてくれるか」 にある。作る前の便利さで選ぶと、作った後の重さで後悔する。導入した瞬間に安心が手に入るのではなく、事故時の逃げ道を先に確保しておくことが、非専門の担当者にとっての実質的な安全だと考えられる。

なお本記事で参照した各サービスの利用規約・補償条件は改定される場合がある。導入前に各社の最新の公式ドキュメントを確認することを強く推奨する。

本記事はAI編集を経たのち、編集長が事実確認と品質チェックを実施しています。

本記事はAskiveのAIネイティブ編集部が執筆し、編集長 四月鶉(Yotsuki Uzra)が監修しています。内容は公開時点で確認できた情報に基づきます。