製品動画のナレーション翻訳を3社外注していた輸出担当がElevenLabsで内製
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Askiveデイリー #177 ・ 2026-08-16

製品動画のナレーション翻訳を3社外注していた輸出担当がElevenLabsで内製

展示会用に作った日本語ナレーション付きの製品説明動画。英語版が欲しいとなった瞬間、翻訳会社に台本を送り、吹き替え業者に音声を発注し、映像会社に音声差し替えを依頼する。3社をまたいで戻ってくるまで2週間、費用は数万円から十数万円。しかもドイツ語版、中国語版と言語が増えるたびに、この工程を最初から繰り返す。輸出担当が一人で抱えている「翻訳の永久サイクル」は、ここ数年で音声AI側の進化が追いつき、内製に寄せられる条件が整ってきた。

今回扱うのはElevenLabsのDubbing(ダビング、動画の音声を別言語に吹き替える機能)である。既存の日本語ナレーション動画をアップロードし、出力言語を選ぶだけで、元の声色に近い多言語音声へ差し替える。ElevenLabs公式ドキュメント(ElevenLabs Dubbing documentation、2025年6月時点)によれば、同社の文字起こしエンジンScribeが単語レベルのタイムスタンプを取得し、元の音声との時間的なズレを抑える仕組みを備えるとされている。

ただし、どんな動画でも同水準で使えるわけではない。向いているのはナレーションが主体で人物のアップが少ない製品説明動画・操作手順動画・会社紹介であり、話者の顔が大写しになるインタビュー動画はリップシンク(口の動きと音声の一致)の粗が目立ちやすく、最終公開版では人の確認を厚めに入れる必要がある。このトレードオフを事前に把握したうえで導入を判断してほしい。

「翻訳発注」から「言語オプション派生」へ発想を切り替える

「原本1本、言語N本」という構造の意味

この記事で通す軸は「原本1本、言語N本」という考え方だ。従来は言語ごとに台本翻訳から音声収録までを丸ごと発注していた。言語の数だけ制作案件が発生し、その都度2週間と数万円から十数万円のコストが積み上がっていた。

ダビング機能を使うと、日本語の完成動画という原本1本を種にして、そこから英語・中国語・スペイン語といった言語N本を派生させる構造に変わる。発注の単位が「案件」から「言語オプション」に下がる、と捉えると腹落ちしやすい。

なぜ今まで難しく、なぜ今できるのか

吹き替えが外注前提だったのは、翻訳・声・タイミングの3つを別々の担当者が握っていたからだ。台本を訳す人、声を当てる人、映像に音を乗せる人が分業で、間に何度も往復が挟まる。ElevenLabsは、この3工程を1つのアップロード操作に畳んだ。ElevenLabs公式ドキュメント(2025年6月時点)によれば、Scribeが元音声を単語単位のタイムスタンプで書き起こし、その区切りに合わせて訳文の音声を並べ直すため、尺のズレが従来より小さく収まるとされている。声色の維持は、元の話者の声質を保ったまま別言語で読み上げる仕組みが担う。

対応言語の確認と向き・不向きの判断

ElevenLabsのDubbingが対応している言語の最新リストは、ElevenLabs公式ドキュメントの「Supported languages」ページ(elevenlabs.io/docs、2025年6月時点)で確認できる。ドイツ語・中国語・スペイン語はいずれも対応言語として掲載されているが、自社のターゲット言語が含まれているかは、導入前に同ページで必ず確認してほしい。

向いているケースと向いていないケースをまとめると次のとおりだ。

  • 向いている: ナレーション主体の製品説明動画、操作手順動画、会社紹介動画(話者の顔映りが少ないもの)
  • 向いていない(要注意): 話者の顔が大写しのインタビュー動画、リップシンクの精度が視聴品質に直結する用途。これらは内製の一次案には使えるが、最終公開版では人の目視確認を厚めに設けること

費用の考え方と導入前の試算

ElevenLabsの料金プランと外注コストの比較

ElevenLabsのDubbingはクレジット制(処理した動画の秒数に応じてクレジットを消費する課金方式)を採用している。ElevenLabs公式料金ページ(elevenlabs.io/pricing、2025年6月時点)では月額プランごとのクレジット付与量が公開されており、処理秒数あたりの消費レートも同ページに記載されている。具体的な単価は料金改定が行われる場合があるため、導入時に同ページで最新値を確認したうえで試算してほしい。

外注コストの目安である「数万円から十数万円(1本・1言語あたり)」と比較する際は、以下の軸で自社のケースを試算すると判断しやすい。

  • 対象動画の合計秒数 × 展開言語数 = 消費クレジットの概算
  • 5言語展開ならクレジット消費は単純計算で5倍になる
  • 月に何本・何言語を処理するかを先に固定し、月額プランのクレジット上限と照合する

コスト削減効果は動画本数と展開言語数が増えるほど大きくなる傾向があると考えられるが、実際の削減幅は処理量と選択プランによって変わるため、まず短い素材(15秒程度)で1回試し、1本あたりのクレジット消費を実測してから本番動画に進むことを勧める。

処理時間の目安と担当者一人での完結可否

ElevenLabs公式ドキュメント(2025年6月時点)には、処理速度についての一般的な言及はあるが、「10分動画1本あたり何分」といった確定的な数値は公表されていない。実測値は動画の音声複雑度やサーバー負荷によって変動するため、導入前の試作段階で自社の代表的な動画を使って計測しておくことを勧める。

品質確認・修正フローについては、担当者一人で完結できる部分と、社内確認が必要な部分が分かれる。具体的には次のとおりだ。

  • 担当者一人で完結できる作業: アップロード・言語設定・処理実行・書き起こし画面での訳文の粗修正
  • 社内確認が必要な作業: 製品名・型番・仕様数値の正誤確認、業界専門用語の訳語の適否確認、金額・契約条件が含まれる文言の最終チェック

輸出担当者が一人で運用する場合でも、少なくとも製品仕様に詳しい担当者が最終音声を一度確認するフローを設けることを強く勧める。

実装手順

ステップ1: アカウントと料金プランの確認

ElevenLabs公式サイト(elevenlabs.io、2025年6月時点)でアカウントを作成する。Dubbingは有料プランの機能であり、無料枠では試用できる範囲が限られる。前節で述べた料金ページで自社の処理量に合うプランを選んでから本番運用に進む。

ここで詰まりやすい点: 「動画1本いくら」ではなく「秒数×言語数」でクレジットが減る。社内で試算する際は、対象動画の合計秒数と展開言語数を先に固定しておく。

ステップ2: 画面から1本ダビングする(ノーコード)

ダッシュボードの「Dubbing」から新規プロジェクトを作る。

  1. 元動画(日本語ナレーション付き)をアップロード
  2. Source language を「Japanese」に指定
  3. Target language を「English」など出力言語に指定
  4. 話者数(Number of speakers)を設定。ナレーション1人なら「1」
  5. 「Create」で処理開始

処理後、書き起こしと訳文が編集画面に並ぶ。ここで訳文を直接手直しできる。

ここで詰まりやすい点: Source language を「自動検出」に任せると、BGMや効果音を人の声と誤認して区切りがずれることがある。日本語だと分かっているなら明示的に「Japanese」を指定する。

ステップ3: APIで複数言語を一括処理する(量が増えたら)

動画が5本、言語が5つとなると画面操作は骨が折れる。ElevenLabs APIで回す。

import requests

API_KEY = "your_api_key"

with open("product_ja.mp4", "rb") as f:
    files = {"file": f}
    data = {
        "source_lang": "ja",
        "target_lang": "en",
        "num_speakers": 1,
    }
    res = requests.post(
        "https://api.elevenlabs.io/v1/dubbing",
        headers={"xi-api-key": API_KEY},
        files=files,
        data=data,
    )
dubbing_id = res.json()["dubbing_id"]
print(dubbing_id)

言語リストをループさせれば、1本の原本から複数言語を連続投入できる。

for lang in ["en", "zh", "es", "de"]:
    data["target_lang"] = lang
    with open("product_ja.mp4", "rb") as f:
        requests.post(
            "https://api.elevenlabs.io/v1/dubbing",
            headers={"xi-api-key": API_KEY},
            files={"file": f},
            data=data,
        )

ここで詰まりやすい点: 処理は非同期(投入後すぐには完成ファイルが返らない方式)で、投入直後には完成ファイルが返らない。dubbing_idを控え、ステータスを確認するエンドポイントで「dubbed」になってからダウンロードする。ループで一気に投げると、完了前に取得しようとして空振りする。

動作確認と品質チェックの方法

出力品質を判定する3つの軸

成功の判定は3つで見る。第一に、出力言語の音声が元の尺内に収まっているか。訳文が長すぎて早口になっていないかを耳で確認する。第二に、書き起こし画面で製品名・型番・数値が原本と一致しているか。「TX-200」が「TX two hundred」と読まれる程度は許容だが、型番自体が誤変換されていたら手修正する。第三に、専門用語の訳が業界の慣用と合っているか。ここは翻訳の正誤なので、必ず社内の担当者か原本と照合する。金額・仕様・契約条件が絡む文言は、AIの出力を最終稿にせず人が確認する。

職種別の活用シーンと指示文サンプル

輸出営業—展示会前の英語版ナレーション差し替え

従来:台本翻訳と吹き替え外注で往復2週間1本あたり数万円以上。内製後:画面操作で当日中に一次案、社内チェック込みで1〜2日

この製品説明動画(日本語ナレーション)を英語版に差し替えます。
出力言語: English(米国向け)
話者: ナレーション1名
注意: 「TX-200」「IP67」などの型番・規格名は原文表記のまま残す。
訳文は展示会来場者向けに、専門用語は業界標準の英語表現を使用。

海外販売代理店サポート—操作手順動画の現地語化

従来:代理店から「現地語版が欲しい」と言われるたび個別発注。内製後:原本1本から必要言語を派生。

この操作手順動画を、代理店向けにスペイン語版へダビングします。
出力言語: Spanish
話者: 1名
手順番号(ステップ1、ステップ2)は音声でも明確に読み上げること。

マーケティング—会社紹介動画の多言語ラインナップ整備

従来:英語版のみ存在し、他言語は予算待ちで放置。内製後:一度に4言語を投入し、サイトの言語切替に揃える。

この会社紹介動画を、英語・中国語・ドイツ語・スペイン語の4言語へ順に処理します。
出力言語ごとに個別ファイルとして出力。
話者: ナレーション1名。
社名・ブランド名は原文発音を維持する。

日本の実務で確認しておく事項

商用利用・機密管理・最終確認の3点

海外サービスなので、日本の中小企業が使う前に押さえておく点がある。入力・出力とも日本語対応は良好だが、専門用語の訳質は業界差が大きく、最終稿は人の確認を前提にする。生成音声を製品広告に使う場合の権利関係は、ElevenLabsの利用規約(elevenlabs.io/terms、2025年6月時点)で商用利用の範囲を各自確認してほしい。動画素材や書き起こしテキストは外部サーバーで処理されるため、未公開製品の情報を含む動画は、社内の機密取り扱いルールに沿って扱う。

導入を進める3ステップ

今日・今週・来週でやること

  1. 今日: 手元の英語化したい日本語動画を1本選び、冒頭15秒だけ切り出して試作。クレジット消費量を実測する。
  2. 今週: 型番・規格名の「原文維持」ルールを含む指示文を、上の営業向けサンプルを土台に自社仕様へ書き換える。また、ElevenLabs公式ドキュメントの「Supported languages」ページで自社のターゲット言語が対応リストに含まれているかを確認する。
  3. 来週: 既存の英語外注1本を、内製一次案と並べて品質と工数を比較し、どの言語まで内製に寄せるか線引きを決める。社内の品質確認フローに誰を巻き込むかもこの段階で決めておく。

音声AIのダビングは英語圏の解説が先行し、日本語ナレーションを起点にした手順の丁寧な解説はまだ多くない。まず1本、原本から言語を1つ派生させるところから、外注サイクルの外に足を出してみるのが現実的だ。

本記事はAI編集を経たのち、編集長が事実確認と品質チェックを実施しています。

本記事はAskiveのAIネイティブ編集部が執筆し、編集長 四月鶉(Yotsuki Uzra)が監修しています。内容は公開時点で確認できた情報に基づきます。