MakeのAI自動化費用が重くなってきたら、n8nとコスト・工数・手触りを比べて
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Askiveデイリー #190 ・ 2026-08-23

MakeのAI自動化費用が重くなってきたら、n8nとコスト・工数・手触りを比べて

ツール契約の明細を眺めていると、自動化ツールの行だけが年々膨らんでいくケースがある。フローが増えるほど従量課金が積み上がり、「便利にするために導入したはずのもの」が固定費の重石になっている現場は少なくないと考えられる。たとえば月3万円台だったツール費用が、フローの追加とともに8万円前後まで上昇し、見直しの検討に入ったという事例が散見される(匿名ユーザーの報告ベース、金額は参考レンジ)。

n8nはAIエージェント(自律的に判断して複数の作業をつなぐ仕組み)の構築を前提とした機能を継続的に拡充しており、MakeからN8nへの乗り換えを検討する担当者が増えている。「今Makeで組んでいる自動化、n8nに移したほうが安くなるのか」という問いに対し、本記事は「月額コストの構造」「AIエージェント構築の手触り」「乗り換えにかかる実質工数」の3軸で比較する。どちらが高機能かではなく、自社の事情でどちらが割に合うかを見る比較だ。

この記事を読み終えると、Makeの管理画面でオペレーション消費数を確認する視点、n8nの料金プランと自社フローとのコスト比較、乗り換えに必要な工数の概算、の3点を自社に当てはめて判断できるようになる。また、乗り換え検討に入る前に「Makeのままでよい条件」も明示する。コスト増が一定の閾値に達していない会社には、移行を勧めない。

Makeのままでよい条件を先に確認する

乗り換えを検討しなくてよい3つの状況

以下に該当する場合、n8nへの移行を急ぐ必要はない。

稼働フローが5本以下かつ実行頻度が低い会社は、後述する乗り換え工数(概算30時間前後)を月額差で回収できない可能性が高い。5本という目安は、後述する乗り換え工数(フロー1本あたり約1.5時間×本数)と月額削減額の回収期間を簡易試算したときに、おおむね6か月以内に回収できる下限として設定している。現状のMakeを維持し、明細を定期的に見直すほうが現実的だ。

非エンジニアがノーコード前提で運用している会社は、Makeの視覚的なフロー設計と既製コネクタ(他サービスとの接続部品)の豊富さが大きな資産になっている。移行によってその資産を捨てるコストが発生する。

AIエージェントを今後も業務の中心に置かない会社は、n8n固有の強みが活かしにくい。Makeは「まず動くものを作る」までの距離が短く、定型処理の自動化であれば十分に機能する。

これら3条件のいずれにも当てはまらず、かつ月額が継続的に上昇している場合に、以下の3軸比較が意味を持つ。

比較軸1:月額コストの構造

課金の数え方が根本的に異なる

MakeとN8nの決定的な差は、料金の数え方にある。

Makeは「オペレーション(処理1ステップ)」課金が基本だ。フロー内でノードが1回動くたびにカウントが進む。フローが複雑になり、実行頻度が上がるほど月末の消費量が読みにくくなる。Make公式サイト(Make社、2025年5月時点)によると、Coreプランは月10,000オペレーション9ドル、Proプランは月10,000オペレーションから16ドル(オペレーション数の上限を増やすほど単価が下がる段階制)となっている。実際の金額はプランと購入オペレーション数によって変わるため、契約前にMake公式サイト(make.com/en/pricing)で現行プランを直接確認してほしい。

一方n8nは、実行(execution、ワークフローが1回起動することを指す)単位の課金、あるいはセルフホスト(自前のサーバーにソフトを置いて運用する形)という選択肢がある。1回のワークフロー実行の中でノードが何個動いても、カウントは実行1回で済む。n8n公式サイト(n8n社、2025年5月時点)によると、クラウド版のStarterプランは月2,500実行20ドル、Proプランは月10,000実行50ドルが基準の目安とされているが、プラン構成は改訂されることがあるため、契約前にn8n公式サイト(n8n.io/pricing)で現行プランを確認すること。

構造から導ける傾向

仮に、1フローあたり平均10ノード、それを月3,000回実行するケースを置く。Make型のオペレーション課金なら30,000オペレーション相当を消費する。n8n型の実行課金なら3,000実行で済む。同じ業務でもカウントの桁が一つ変わる。これはあくまで前提を固定した仮定の計算であり、実際の消費は組み方で変わる。ただし「ノードが多いフローほどn8n型が有利になりやすい」という傾向は構造から言える。

なお、Makeの管理画面では「オペレーション」タブから当月の消費数をリアルタイムで確認できる。まず自社の月次消費量を確認し、上記のプラン単価と突き合わせることが比較の出発点になる。

この軸の判定:1フローあたりのノード数が多く、実行頻度が高い場合はn8nが有利になりやすい。ノード数が少ない定型フロー中心であればMakeとの差は縮まる。

比較軸2:AIエージェント構築の手触り

n8nのAgent BuilderとMCP連携

n8nがAgent Builder(AIエージェントをワークフローのノードとして組み込む機能群)を強化した意味は、AIエージェントを「ノードとして」ワークフローに組み込める点にある。n8nの設計思想は、決定論的な処理(毎回同じ結果を返す定型処理)とAIエージェント型の処理を、同じキャンバス上で混在させられることだ。たとえば「フォーム送信を受け取る(定型)→内容をAIで要約する(AI)→Slackへ通知する(定型)」という流れを、ノードをつないで一枚の絵として組める。Agent Builder関連の機能追加の詳細は、n8n公式ブログおよびリリースノート(n8n社、n8n.io/blog および n8n.io/release-notes、2025年5月時点)で経緯と仕様を確認できる。

さらにn8nはMCP(Model Context Protocol、AIツール同士をつなぐ接続規格)に対応しており、Claude Desktopから自然言語でワークフローそのものを生成・編集できる。n8n公式ウェビナーでプロダクトマネージャーのSim Superville氏が解説した内容(n8n社公式ウェビナー、2025年時点)によると、Claudeに音声やテキストで要件を伝えると、Claudeが質問で要件を整理し、n8nキャンバス上に動くワークフローをリンク付きで生成する。生成後は特定ノードを選んで修正依頼やダミーデータでのテスト実行まで、対話で進められる。

つまりn8n側は、「AIエージェントを組む作業自体をAIに手伝わせる」方向に進んでいる。n8nの無料トライアルはn8n.io/get-startedから開始できる(n8n社、2025年5月時点)。

Makeの強みと設計上の注意点

対してMakeは、視覚的なフロー設計の分かりやすさと、既製コネクタの豊富さで、非エンジニアが「まず動くものを作る」までの距離が短い。AIステップも組めるが、n8nほどエージェントを深く作り込む前提の設計ではない。手触りで言えば、Makeは「整った既製の道具箱」、n8nは「自由に組める作業台」と表現できる。

ただし自由度には代償がある。エージェントが金額・契約条件・顧客情報を扱う処理を含むなら、AIの出力をそのまま流さず、原本との照合や人の最終確認を必ず挟む設計にすること。ハルシネーション(もっともらしい誤答を生成する現象)は設定一つで消えるものではない。

この軸の判定:AIエージェントを業務の中心に据えたい場合はn8nが有利。定型フローの自動化が主目的であれば、Makeの既製コネクタと視覚的設計が生産性を保ちやすい。

比較軸3:乗り換えにかかる実質工数

移行コストを過小評価しない

ここが最も見落とされやすい。月額が下がっても、乗り換え工数がそれを食い潰せば意味がない。

現実には、Makeで組んだフローをn8nへワンクリックで移す方法はない。ノードの対応関係を確認しながら、事実上組み直しになる。連携している外部サービスの認証設定もやり直しだ。

稼働中フローが20本の場合を試算する。1本の組み直しと動作確認に平均1.5時間かかると置くと、作業時間は30時間程度、中堅社員の概算で4日分の工数になる。この1本あたり1.5時間という数字は、ノード数10〜20本程度の標準的なフローを想定した筆者の推計であり、複雑なフローではさらに時間を要する場合がある。加えてセルフホストを選ぶなら、サーバー構築とアップデート運用という別の作業が乗る。ゼロ情シス(情報システム担当者が社内にいない状態)の現場でここを軽く見ると、移行の途中で日常業務が回らなくなるリスクがある。

海外サービスとして確認すべき軸

確認すべき軸がさらにある。日本語UIの対応度、データの保存先と規約、日本語サポートの有無だ。n8nもMakeも国産ではないため、社内の機密情報を扱うフローを組む前に、データ保存に関する規約は必ず社内ルールと突き合わせておきたい。

この軸の判定:乗り換え工数は最低30時間と見込む。月額削減額をこの工数コストと比較し、回収期間が許容範囲に収まる場合のみ移行を検討する。

ケース別の選択基準と今日できる自己診断

状況ごとの判断フロー

フローが5本以下・実行頻度も低い会社は、乗り換えの工数が回収できない可能性が高い。今のMakeを維持し、明細だけ定期的に見直すほうが現実的だ。

フローが複雑(1本のノード数が多い)で実行頻度も高い会社は、コスト構造の差が効く。月額が継続的に膨らんでいるなら、n8nの実行課金またはセルフホストへの移行が割に合いやすい。

AIエージェントを業務の中心に据えたい会社は、n8nが有力な選択肢になる。Agent BuilderとMCP連携で、エージェントの設計と改修を対話で回せる余地が大きい。

社内にサーバーを触れる人が一人もいない会社は、n8nを選ぶならセルフホストではなくクラウド版を前提にする。自由度より運用の軽さを優先すべき状況だ。

今日できる自己診断

判定は3つの質問で足りる。

一つ、今のMake明細は毎月上がり続けているか。上がっていないなら、乗り換え検討はまだ早い。まずMake管理画面の「オペレーション」タブで当月の消費数と上限の比率を確認する。二つ、1本あたりのノード数が多いフローが主力か。多いならn8nのコスト構造が効く。三つ、AIエージェントを今後の主軸にするか、社内にサーバー担当はいるか。主軸にしたいがサーバー担当がいないなら、n8nクラウド版(n8n.io/get-started、n8n社、2025年5月時点)が落としどころになる。

自動化ツールは、入れた瞬間に楽になるのではなく、コスト構造を理解して初めて楽になる。膨らんだ月額を前に次のアクションを考えるなら、まず自社のフローが「ノードが多い型」なのか「本数が少ない型」なのかを数えるところから始めるとよい。


本記事はAI編集を経たのち、編集長が事実確認と品質チェックを実施しています。

本記事はAskiveのAIネイティブ編集部が執筆し、編集長 四月鶉(Yotsuki Uzra)が監修しています。内容は公開時点で確認できた情報に基づきます。