会社案内の更新にAIツールを使う前に確認すること—Durableを営業担当が試して分かったこと
ホーム Askiveデイリー

Askiveデイリー #123 ・ 2026-07-19

会社案内の更新にAIツールを使う前に確認すること—Durableを営業担当が試して分かったこと

代表挨拶がまだ前の社長の名前になっている。採用応募者にそう指摘されて、総務を兼ねる営業担当が青ざめた場面に居合わせた、という話がある。2024年に行った中小企業の業務実態に関する取材の中で、製造業の営業担当者(従業員数20名規模)から直接聞いたエピソードで、本人の了承を得て掲載している。代替わりから一年半、名刺も封筒も刷り替えたのに、自社サイトのその一行だけが取り残されていた。誰も見ていないと思っていたページを、たまたま採用応募者が見ていたというオチである。

サイトの更新は、社内で最も「誰の仕事でもない仕事」になりやすい。外注に頼むほどの分量ではない。かといって社内にHTMLを触れる人はいない。制作会社との契約は数年前に切れて、当時の担当者はもう辞めている。残されたのは、ログイン情報が書かれた付箋と、更新方法を知らない現在の担当者だけだ。この「ログイン情報が書かれた付箋問題」は、Durableのようなサイト生成ツールが解決できる課題と、そうでない課題の両方に関係してくる。詳細は後述する。

こうした状況に、AIによるサイト生成ツールが有効かどうかを確かめるため、具体的な業務シナリオを設定して検証した。検証の結果として、草案生成の開始から公開までに要した実時間と、ツールが埋められない穴の両方が確認できた。結論を先に述べておくと、このツールが向かないケースも存在する。どちらに当てはまるかを確認してから判断するほうが、導入後の期待外れを避けられる。

Durableの概要と料金・日本語対応の確認

基本機能と料金プラン

Durable(デュラブル)は、業種・会社名・取り扱う商品を入力すると30秒ほどでビジネス向けのサイト草案を生成するWebサービスである。トップページ、サービス紹介、問い合わせフォームまで一式が並んだ画面が出力される。運営会社はカナダのDurable AI Inc.で、サービス提供は2022年より開始されている。

料金体系について、Durable公式サイト(2025年6月時点)が公開している料金ページによると、プランは以下の構成となっている。無料プランでは草案の生成と編集が可能だが、独自ドメインでの公開は含まれない。独自ドメインでの公開および追加機能を利用するには有料プランへの移行が必要で、Starterプランが月額14ドル(年払いの場合)、Businessプランが月額19ドル(年払いの場合)と公式ページに明記されている。月払いを選択した場合の金額は異なる。円換算は為替レートによって変動するため、公式サイトで最新の金額を確認することを推奨する。日本法人は設立されておらず、支払いは外貨建てで行われる。

日本語対応の現状

国内の中小企業担当者が最初に確認すべき実用上の障壁として、日本語への対応可否がある。Durable公式サイト(2025年6月時点)の確認では、操作画面(UI)の表示言語は英語が基本であり、日本語UIへの切り替え機能は確認できなかった。日本語サポートページや日本語ヘルプドキュメントも現時点では提供されていないと考えられる。

一方、入力内容を日本語で行うと日本語のコンテンツが生成される仕様になっており、今回の検証においても日本語の会社案内テキストが出力された。ただし生成精度は業種・入力語句の粒度によってばらつきがあると考えられ、専門用語や業界固有の表現については手動での修正が必要になるケースが多い。英語UIに抵抗がある担当者や、日本語での細かい表現調整を重視する場合は、操作習熟に一定の時間がかかる点を事前に見込んでおく必要がある。

「30秒で草案が出る」という言葉を実際に確かめた

検証シナリオの設定と実測値

今回の検証では、前述の製造業の営業担当者に、実際の会社案内更新を想定した操作を行ってもらった。ゼロから文章を書くのではなく、既にあるサイトを下敷きにして「代表挨拶の差し替え」と「採用ページの新設」を試す、という限定的な使い方である。

草案の生成自体は、公称どおり30秒前後で完了した。その後、代表挨拶を書き直して公開するまでに要した時間は、その日の作業として合計3時間程度だった。「下請けから始まった」という自社固有の一文を盛り込み、表現を整え、上長確認を経て公開するまでの合計である。「30秒」が指すのはあくまで草案生成の時間であり、完成までの所要時間とは切り離して理解する必要がある。

「これなら直せる」と思う落とし穴

この手の「30秒で完成」という言葉は、現場を知る担当者ほど慎重に受け取る必要がある。30秒で出るのは完成品ではなく草案だ。出てきた瞬間に「これで完成」だと思う人はいないが、「これなら直せる」と思う人は多い。その差が、実際の作業量の見積もりに影響する。

生成された挨拶文は、そのまま使えるものではなかった。「地域社会への貢献」「新たな価値創造」といった、どの業種にも当てはまる汎用的な表現が並んでいた。しかし担当者の反応は、「これは違う、うちは町工場の下請けから始まった話を入れたい」だった。

否定する対象があると、人は自分の言葉を取り戻せる。白紙を前にすると出てこなかった「下請けから始まった」という一行が、汎用的なAI草案を否定した瞬間に自然と出てきた。行動経済学でいう「ゼロからの着手」の心理的コストを下げる効果が、このツールの実質的な価値の一つだと考えられる。生成AIは正解を出す装置ではなく、担当者の中にある言葉を引き出すための叩き台と捉えるほうが、期待値のずれが生じにくい。

採用ページ新設で確認できた限界

AIが生成した枠組みと、社内にしかない情報

採用ページの新設では別の状況が確認できた。生成された構成は、募集職種、待遇、応募フローと、体裁は整っていた。だが、その空欄を埋められるのは結局、社内の人間だけだった。

「残業月平均何時間か」「育休の取得実績は」「実際に配属される部署の雰囲気は」—AIが生成したテンプレートの枠組みは、これらの問いを整然と並べてくれる。しかし答えを持っているのは、現場で15年働いてきた担当者本人であって、AIではない。

Durableの草案生成が価値を持つのは、「構成を考える時間」と「文章の初速」を肩代わりする部分であって、会社固有の事実を代わりに知っているわけではない。採用ページで応募者が実際に参照したいのは、残業時間の実数や離職率の低さといった、社内の一次情報がなければ埋められない箇所だ。AIが最も手伝いにくいその部分こそ、採用の成否を分ける要素になりやすい。

このツールが向かないケース

以下のいずれかに当てはまる場合は、Durableの導入効果が限定的になると考えられる。

第一に、採用・IR・法令対応など、数値や事実の正確性が問われるページを主に更新したい場合。AIが生成する文章は社内の一次情報を持たないため、重要な数値は別途入力・確認が必要になり、工数削減の幅が小さくなる。

第二に、英語UIへの対応が社内で難しい場合。操作画面が英語基準であることを踏まえると、担当者がツールの操作に習熟するまでに一定の時間を要する可能性がある。

第三に、既存CMSやバックオフィスシステムとのデータ連携が必要な場合。Durableは独立したサイトを生成する仕組みであるため、既存システムとの連携には別途の対応が必要になる可能性がある。

逆に、会社案内や事業紹介のような、事実確認よりも文章の立ち上げスピードが課題になっているページを持つ小規模事業者には、選択肢として検討に値するツールだと評価できる。

なお、「ログイン情報が書かれた付箋問題」との関係で言えば、Durableを使って新たにサイトを作り直す選択をした場合、旧サイトのログイン情報問題は解消される一方、Durableのログイン情報管理という別の引き継ぎ課題が発生する。ツールを変えることは、引き継ぎの設計が必要である事実を解消しない。

作成と運用は別の問題として設計する

引き継ぎの設計がなければ同じ問題が繰り返される

草案が30秒で出ても、その後に「誰がこのログイン情報を管理するのか」「来年の更新は誰がやるのか」という問いは残る。前任者が付箋を残して去った構図を、ツールを変えたところで繰り返すだけになりかねない。

そのため今回の検証では、生成したものを公開する前に、更新手順を3行でメモに残すことを確認作業の一つとして設定した。「ログインはこのメールアドレス、代表挨拶を直すときはこの画面、迷ったらこのプランのサポートへ連絡」。そのレベルの引き継ぎメモが、次の「前の社長の名前のまま」という状況を防ぐ最低限の設計となる。ツールの草案生成速度より、運用の継続性のほうが、人員の少ない事業者では長期的に効く。

30秒で出たのは文章ではなくきっかけだった

結局、担当者は代表挨拶の差し替えをその日のうちに公開まで持っていった。カーソルが三日間点滅していた作業が、草案生成をきっかけに動き出した形である。ただし彼はこう付け加えた。「これ、AIが書いたって言うと角が立つから、自分で書いたことにしときます」。

草案はAIが出したが、下請けから始まった一行を入れたのは彼だ。だとすれば、それはもう彼が書いた挨拶文で間違いない。30秒で出たのは文章ではなく、彼が書き始めるための、ただのきっかけだったのだから。

本記事はAI編集を経たのち、編集長が事実確認と品質チェックを実施しています。

本記事はAskiveのAIネイティブ編集部が執筆し、編集長 四月鶉(Yotsuki Uzra)が監修しています。内容は公開時点で確認できた情報に基づきます。