社内問い合わせ対応:ChatGPTとNotebookLMを比較して選択する
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Askiveデイリー #124 ・ 2026-07-19

社内問い合わせ対応:ChatGPTとNotebookLMを比較して選択する

営業担当が商談直前に「あの提案資料の承認フロー、改定後はどうなりましたか」と問い合わせてくる。マーケティング担当が「顧客向けFAQの最新版、どこに入ってましたっけ」と聞いてくる。総務担当には「経費精算の締め日いつでしたっけ」「有給の申請、どの用紙です」「駐車場の位置図ってどこに」という声が月に何十回も届く。質問の内容は担当者によって変わるが、構造は同じだ。答えるたびに作業は中断し、また最初からやり直す。問い合わせ対応そのものより、この「中断コスト」が地味に効いてくる。

この負担を減らそうとしたとき、選択肢は多くの場合2択になる。ChatGPT(OpenAIが提供する対話型AI)か、NotebookLM(Googleが提供する資料読み込み型AI)か。どちらも「質問に答える」道具に見えるが、回答の生成方式が根本的に異なる。その違いを把握しないまま導入すると、「AIが誤った締め日を平然と答える」という新種のトラブルを生む。このリスクが起きやすいのはChatGPTの初期設定側であり、その理由と対策は比較軸1で詳述する。

なお、前提として確認しておきたいのは「どちらかを必ず選ぶべき」という話ではないという点だ。問い合わせの中身によっては、どちらのツールも現時点では導入に適さないケースがある。その条件も含めて、以下で整理する。費用感を先に確認したい場合は、比較軸2(セキュリティと料金)から読み始めることができる。

選択の判定軸を「答えの出どころ」に置く理由

社内問い合わせに一般論は通用しない

社内Q&A用途での選択は「答えが自社資料に縛られているか」で決める。この一点を最優先にする。

理由は単純で、社内問い合わせの答えは「一般論」ではなく「自社の就業規則の第何条」だからだ。世間で標準的な有給ルールを流暢に語られても困る。必要なのは、自社のPDFに書いてある通りの答えである。

「AIが誤情報を答える」リスクの構造

ChatGPTが代表するLLM(大規模言語モデル:大量のテキストデータを学習した汎用型AIの総称)は、学習済みの膨大な一般知識から回答を「思い出して」生成する設計をとっている。この構造上、ハルシネーション(AIが根拠なく誤った情報を自信を持って生成する現象)が発生しやすい。たとえば「有給は入社半年後から10日付与」という一般的な労働基準法の解釈を、自社が「入社時から付与」と定めている場合でも堂々と答えうる。

OpenAIは公式ヘルプドキュメント(OpenAI Help Center、2025年5月時点)の中で、ChatGPTは事実確認を必要とする用途では出力を鵜呑みにせず人間が検証する運用を推奨している。一方、GoogleのAIリサーチツールであるNotebookLMは、公式製品紹介ページ(Google NotebookLM 製品紹介ページ、2025年5月時点)において、ユーザーがアップロードした資料のみを根拠として回答を生成する仕組みを設計上の特徴として明示している。この設計の違いが、社内問い合わせ用途における両者の適性を分ける核心である。

比較軸は以下の3点に絞る。回答の正確さ(出どころの縛り)、セキュリティと料金、準備と運用の手間。この順で見ていく。

どちらにも「選んではいけない条件」がある

比較の前に、除外条件を明示しておく。

NotebookLMを選んではいけない条件は、「質問の大半が加工・生成・翻訳など文章作業であるケース」だ。NotebookLMは資料の外に出ない分、フリーの文章生成や多段階の推論を伴う作業には向かない。資料に答えがない問いには「情報なし」と返すため、汎用的な業務アシスタントとしては機能が足りない。

ChatGPTを選んではいけない条件は、「AIの出力を人間が検証する運用体制を整えられないケース」だ。初期設定のまま社内資料を参照させ、出力を無確認でそのまま社内に共有する運用は避けるべきである。特に給与テーブルや個人情報を含む資料を扱う場合、設定を整えないまま使い始めることはリスクが高い。

これらのケースに当てはまる場合、どちらのツールも現段階での導入を急がないことが実務的に正しい選択になることがある。

比較軸1:回答の正確さ—「縛られる」か「思い出す」か

NotebookLMは資料の外に出ない設計

NotebookLMは、アップロードした資料の中だけから答えを組み立てる仕組みを土台にしている。技術的にはRAG(Retrieval-Augmented Generation:資料を検索して該当箇所を根拠に文章を生成する方式)と呼ばれる構造だ。就業規則のPDFを入れれば、答えの根拠として「この文はソース3の12ページ」といった引用が付く。資料に書いていないことは「情報が見当たりません」と返す傾向が強い。つまり出どころに縛られる。

Google NotebookLM 製品紹介ページ(2025年5月時点)によれば、NotebookLMは「ソース資料のみを参照し、一般的な学習済み知識とユーザー資料を混在させない」設計を特徴として掲げている。この設計は、社内固有ルールの正確な伝達という用途に直結する。

ChatGPTは設定次第でリスクを抑えられる

ChatGPTは学習した膨大な一般知識から「思い出して」答える設計だ。ファイルを添付して答えさせることもできるが、素の状態では一般論と自社資料が混ざりやすい。前述のハルシネーションが起きるのはこのためである。

ただし、ChatGPTも無防備ではない。プロジェクト機能(タスクごとに背景資料と会話を隔離する機能)を使い、参照範囲を限定すれば、混ざるリスクはかなり抑えられる。「初期設定のまま使うと危ない」だけであって、設定次第で縛りは足せる(OpenAI ChatGPT プロジェクト機能ヘルプページ、2025年5月時点)。

どちらを選ぶかの判断目安

問い合わせ100件のうち「自社固有ルール」が占める割合が判断材料になる。締め日・申請様式・座席表・社内連絡先・承認フロー・顧客向けFAQの最新版といった固有情報が7割を超えるなら、出どころに縛られるNotebookLMが向く。逆に「文章を丁寧にして」「この社内通知を要約して」「提案資料のドラフトを作って」といった加工作業が中心なら、ChatGPTの生成力が効く。

比較軸2:セキュリティと料金—何が「学習」に流れるか

料金の実数を確認する

中小企業の担当者が最初に確認すべきは費用感だ。

NotebookLMは個人向けの無料枠で利用を開始できる(Google NotebookLM 公式サイト、2025年5月時点)。Google Workspace Business Starterプラン(月額680円/ユーザー、Google Workspace 料金ページ、2025年5月時点)を既に契約している会社であれば、追加費用なしで組み込める構成をとれる場合がある。詳細はGoogle公式の最新料金ページで確認が必要だが、既存のGoogle環境を持つ組織にとって稟議を通しやすい選択肢といえる。

ChatGPTは無料版でも一定の機能が使えるが、業務で安定運用するにはChatGPT Plus(月額20ドル、約3,100円)が実務的な出発点になる(OpenAI 料金ページ、2025年5月時点)。複数人での利用や管理機能を必要とする場合はChatGPT Team(1ユーザーあたり月額25ドル、約3,900円から)が対象となる。1人あたりコーヒー代程度と見るか、無料で始められるNotebookLMを先に試すかは組織の状況による。

学習利用の設定を必ず確認する

セキュリティで見落とされがちなのが学習利用の設定だ。ChatGPTは初期設定だと入力内容がモデル改善に使われうるため、設定画面でデータコントロールの学習をオフにする一手間が要る。この設定は30秒ほどで終わるが、実施していない会社は少なくないと考えられる(OpenAI データポリシーページ、2025年5月時点)。就業規則程度であれば影響は限定的でも、給与テーブルや個人情報を含む資料を扱うなら、この一手間の有無が線引きになる。

NotebookLMについても、Googleの公式データ利用ポリシー(Google NotebookLM プライバシーポリシー、2025年5月時点)を確認したうえで導入判断を行うことを勧める。どちらのツールでも、扱う資料の機密度に応じて設定を確認してから入れる、が原則だ。

比較軸3:準備と運用の手間—最初の30分か、毎回の設計か

NotebookLMは「資料を入れて終わり」に近い

NotebookLMは、資料をアップロードして終わりに近い。就業規則、経費規程、FAQ集、顧客向け対応マニュアルをまとめて放り込めば、以降はそのノートに質問するだけ。資料が更新されたら差し替える。準備は初回の数十分、運用は「新しい規程が出たらファイルを入れ替える」程度で済む。総務の非専門担当が一人で管理できる範囲に収まる。

ChatGPTは設計責任が発生する

ChatGPTでQ&Aを安定させるには、もう一段の工夫が要る。都度ファイルを添付するか、GPTs(特定業務専用のカスタムAIを構築する機能)に社内資料を知識として登録し、「登録資料の範囲で答え、なければ分からないと言う」といった指示を組み込む。作れば強力だが、作る側に「AIへの指示を設計する」発想が必要になる。ここで多くの兼任担当が止まる。

手間の差をならすと、立ち上げまでの心理的ハードルはNotebookLMのほうが低い。「資料を入れるだけ」は、AIに不慣れな同僚にも説明しやすい。逆に言えば、ChatGPTは自由度が高いぶん「何をどう仕込むか」を自分で決めねばならず、その自由が兼任担当には重荷になりがちだ。

ケース別の選び方

4パターンで判断する

A:総務・庶務が一人で回す小規模チームなら、NotebookLM。資料を入れるだけで引用付きの答えが返り、管理が属人化しにくい。「あの人にしか触れないブラックボックス」になりにくいのが少人数には効く。

B:問い合わせ対応と同時に、返信文の作成や要約もしたいなら、ChatGPT。答えを出すだけでなく「そのまま送れる返信文にして」まで一気通貫でこなせる。プロジェクト機能で参照範囲を絞る前提で使う。

C:Google Workspaceを全社導入済みなら、NotebookLMから試す。追加契約なしで始められ、社内展開の稟議も通しやすい。

D:すでにChatGPT有料版を契約済みで使いこなす人がいるなら、無理に乗り換えず、GPTsで社内FAQを一つ作るところから。既存投資を活かせる。

まとめと具体的な導入ステップ

判定を一本の線にする

問い合わせの中身が「自社固有ルールの正確な回答」中心なら、NotebookLM。答えが資料に縛られ、引用が付き、非専門の担当一人でも管理できる。同じ質問の行列を減らすという本来の目的に素直に届く。

問い合わせ対応が「答え+文章加工」まで含むなら、ChatGPT。ただし学習オフ設定とプロジェクトによる参照範囲の限定を、使い始める前に済ませること。この2つを飛ばすと、便利な道具が誤答製造機に変わる。

判定に迷ったら、次の3つを自分に問う。問い合わせの7割は自社固有ルールか。管理を一人で回すか複数人か。既にどちらかの有料版を契約済みか。この3問の答えが、選ぶべきツールを指し示す。

今日から動くための導入ステップ

ツールを決めた後の最初の動きを具体化しておく。

NotebookLMを選んだ場合:

  1. notebooklm.google.com にGoogleアカウントでアクセスする(無料で開始可能)
  2. 新しいノートブックを作成し、就業規則・経費規程・社内FAQのPDFをアップロードする(1ノートブックあたり最大50ソース、Google NotebookLM 公式ヘルプ、2025年5月時点)
  3. 「経費精算の締め日はいつですか」など実際の問い合わせ文をそのまま入力し、引用付きで回答が返ることを確認する
  4. 回答精度に問題がなければ、担当者全員にノートブックのURLを共有する

ChatGPTを選んだ場合:

  1. chatgpt.com にアクセスし、PlusまたはTeamプランを契約する
  2. 設定画面から「データコントロール」→「モデルのトレーニングに使用する」をオフにする(所要時間30秒
  3. 左サイドバーの「プロジェクト」から新規プロジェクトを作成し、社内資料をアップロードする
  4. システムプロンプト(AIへの事前指示)に「添付資料の範囲内でのみ答え、資料に記載がない場合は『資料に情報が見当たりません』と返すこと」と入力する
  5. テスト問答を5件程度実施し、資料外の一般論が混入しないことを確認してから全社展開する

最も高機能な選択が最良とは限らない。「資料を入れるだけ」の地味さが、続く仕組みには一番効くことがある。

本記事はAI編集を経たのち、編集長が事実確認と品質チェックを実施しています。

本記事はAskiveのAIネイティブ編集部が執筆し、編集長 四月鶉(Yotsuki Uzra)が監修しています。内容は公開時点で確認できた情報に基づきます。